10月1日、米国のエンタープライズ系業界誌の誌面に『FUJITSU』の名前が飛び交った。サンフランシスコで開催されているオラクル社のプライベートショー「Oracle OpenWorld」で富士通の豊木則行氏(執行役員常務)が基調講演をおこない次世代チップ「アテナ」プロジェクトを発表したからだ。
●「Oracle, Fujitsu team on Sparc64 'Athena' chip」
(October 02, By Joab Jackson, IDG News Service)
オラクルはIBMと企業業務アプリケーション市場を二分する大手。一方、富士通は日本国内におけるIT系システムインテグレーションの大手として日本IBMとしのぎを削っている。そうした背景から「オラクルがIBM対抗策として富士通と次世代チップ・プロジェクトを進めている」と米国のメディアは騒ぎ立てた。その影には「国際市場の建て直しには、競争相手であるオラクルとの提携も辞さない」という富士通の密かな決意がにじんでいる。
まず、業務アプリケーション市場におけるオラクルとIBMの違いに触れておこう。
オラクルは主要なアプリケーションを自社内で完結させる「インハウス戦略」を好み、自社開発が間に合わない新市場では新興ベンダーを次々と買収してきた。たとえば、2005年9月にCRMのシーベル・システムズ(Siebel Systems)を買収したことは有名だ。
一方、業務アプリケーション分野でリーダーを自認するIBMは「パートナー(合従連衡)戦略」を基本にしている。同社はそもそも、メインフレームとメンテナンス・サービスというインフラ型サービス時代が長かった。しかし、90年代後半に、アプリケーション・ソフトの開発、特にミドルウェア分野に主軸を置いた戦略に転換した。
これは、企業システムのコアとなるミドルウェアとデータベースは自社製品で固めるが、それ以外の部分については様々なパートナーと補完関係をつくる。これにより、IBMは世界最大のシステム・インテグレーターとしてトップの座に君臨している。