第1回はこちらをご覧ください。
常見 自己啓発や英語も含めて、『日経ビジネスアソシエ』的な自分磨きや昔の勝間本的な自分磨きに、なぜみんなハマるんですかね。僕、エビさんの『課長になったらクビにはならない』(朝日新聞出版)っていう本が大好きで、特に資格試験志向の風潮を批判されていたくだりが印象に残っているんですけど。
海老原 結局、「雇用」とか「働く」というのは、目に見えないものでしょう。見えづらい。で、見えづらいものを語ろうとすると、「欧米型モデル」だの、資格だの、TOEICの点数だの、何か見えやすいものを使いたくなるんです。
僕はずっと人材ビジネスをやっていて、いろんな企業を見てきたし、いろんな転職をする人の話も聞いてきたけれど、普通の人は自分の人生しか知らない。そうなると、自分の人生以外のことを知るには、目に見えるものを頼るしかないんです。だから、資格とか英語とかに行っちゃうの。
飯田 なるほど。確かにストレートな営業職などを除いて、現代の仕事では、自分が何をしているのか、自分の仕事のどの部分が利益を生んでいるのかが、非常に見えにくくなっていますね。その中で、資格やTOEICの点数は、わかりやすいし見えやすい。しかも、持っていると何となくうれしいし、それ自体が目標としても使いやすい。
海老原 さらに、その難易度が上がって難しいとなると、持っている本人はいっそう自信を持つんですよ。
だけど、はっきり言っとくよ。たとえば税理士の資格を持っていて、転職エージェントに相談に来る人で、年収300万円くらいというケースは非常に多いんです。すごく多い。
なぜかというと、今は税理士も相当余っているから。本人は、非常に難しい試験を通っているんですけどね。
飯田 別に、日本企業が資格を評価しないわけではないんですよね。実際には、資格を持っていたって、それだけではさほど役に立たないことが多い。
海老原 資格を持っていても、今は税理士でも営業しなきゃならない。もしくは、人を使って組織を作り、自分は上になって大きい仕事をする。そうしない限り、金は儲からないんですよ。
だから、「俺は人と話すのが下手だから税理士の資格を取る」とか「会社勤めが嫌だから、税理士の資格を取って何とかする」っていう人たちは、税理士の一番下に入るしかない。開業しても仕事が入らない。営業できないから。
すると、そういう人たちは年収300万円で終わっちゃう。「資格」プラス「営業」あるいは「人を使うこと」という仕組みを作らない限り、資格は生きてきません。