「シュレーディンガーの猫」は生きている!?

有名な「猫」のパラドックスが解けた!
古澤 明 プロフィール

 絶対零度では量子は完全な波にもなる。したがって、光子は完全な波としても考えることができる。ただし、光子一個分にエネルギーが確定しているので、不確定性原理によりその共役物理量である時間、波としては位相が全く定まらない状態となっている。繰り返すが、このような摩訶不思議な状態になるのは、光にとって我々の世界は絶対零度だからである。

 このような光子が集まっていくと古典的な波動となるのである。特に中心的役割を果たすのが、光子が一つも存在しない状態=真空である。真空と光子が「重ねあわせ状態」になることで、古典的な波動が生まれていく。そして、今回の話の中心であるシュレーディンガーの猫状態も、このような光子の重ねあわせとして表現される。

 もう少し詳しく言うと、シュレーディンガーの猫状態とは偶数個の光子の重ねあわせ状態、あるいは奇数個の光子の重ねあわせ状態なのである。また、光子の重ねあわせとしての表現以外に、シュレーディンガーの猫状態は波動としても表現できる。ただ、古典的な波動である横波ではなく、音波のような「縦波」となっている。古典電磁気学では、光は横波以外存在し得ないが、量子力学的には縦波もアリなのである。

 拙著では、このような光の状態を作る方法についても述べる。もちろん、そこでは量子力学的手法が中心にあるが、根本思想として、「知る由もない」という状況が重ねあわせ状態を生むことが述べられている。

 良い頃合なので、拙著の前振りは終わりにする。あとはじっくり拙著を読んで楽しんでいただきたいと思う。

(ふるさわ・あきら 東京大学教授、量子光学)


「シュレーディンガーの猫」のパラドックスが解けた!
著者:古澤 明
講談社刊 / 定価840円(税込み)

古澤 明(ふるさわ・あきら)
1961年埼玉県生まれ。1986年東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程修了。(株)ニコン開発本部研究所、同筑波研究所、東京大学工学部物理工学科助教授を経て、2007年より、東京大学工学部物理工学科・大学院工学系研究科物理工学専攻教授。工学博士。1996年から二年間、カリフォルニア工科大学客員研究員。1998年に成功した決定論的量子テレポーテーションの実験は、「Science」誌が選ぶ1998年の10大成果に選出された。久保亮五記念賞、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞、国際量子通信賞等を受賞。