「立場主義者」にはどう立ち向かうべきか ~『もう「東大話法」にはだまされない』著者:安冨歩(東京大学東洋文化研究所教授)

 こうした悪事の微分化に手を染めている企業人が使いたがる「東大話法」が「弊社といたしましては」「我が社においては」です。当事者意識など微塵も感じさせずに、ひたすら傍観者ぶります。

 こういう「我が国」「我が社」男は、聞いてもないのに「女房がさ~」「カミさんがねえ~」と言いたがります。これはけっして愛妻家の証などではなく、「東大話法」のファミリーバージョン。自分はこう思うという主体性が欠落した、「夫」という立場を守るためだけに発言している「立場主義者」というわけです。

---本書では、「立場三原則」という日本社会の隠れた規則を紹介されています。

 1.役を果たすためには、なんでもやらなくてはならない。2.立場を守るためには何をしてもいい。3.人の立場を侵害してはいけない。以上の3つです。「東大話法」の使い手たちは、間違いなくこの3原則に縛られています。

 こうした呪縛は昼間の顔だけではなく、彼ら「立場主義者」の人格そのものを蝕みますので、家に帰っても「夫」という役を果たして立場を守るのです。このような男性に惹かれて結婚する女性は、どういう価値観をもっているのでしょうか? 

 「立場」が好きな夫と添い遂げるには、自らも「妻」という立場で夫を搾取するという思考の女性でなければならないでしょう。

---夢も希望もありませんね。

 そうです。そんな現実に気づいて絶望し、上司に相談したとしましょう。「立場主義者」の上司なら、こんな「東大話法」で慰めてくれるはずです。

 「夫婦なんて、どこだって、そんなものだよ」

---なんだかよくわかりませんが、納得してしまいそうですね。

 「どこだって」と、まるで自分が社会のスタンダードを知り尽くしたかのように装って、ケムに巻くのです。ふつうに考えれば、その相談した男性と同じような夫婦関係がいったいどこにあるのか、まったくもって根拠がないはずなのですが、自信満々に断言されると、「そんなものかな」と洗脳されてしまいますから要注意です。