羽佐間正雄 第4回 「稀代の左腕、金田正一の剛速球がミットを持たないぼくに「ビシッ!」と決まった瞬間」

島地 勝彦 プロフィール

羽佐間 面白いことに、川上監督は雨を歓迎したんです。

セオ 雨のなかの試合ですか。どうしてですか?

羽佐間 まだドーム球場が存在しない時代は、多少の雨くらいでは中止の理由にならなかった。実際、雨を得意とする選手は誰一人いない。当然、投手にしても打者にしても、雨によってミスを犯す確立は高くなる。そこをあえて川上は逆説で士気を煽ったんです。

 「考えてみろ。濡れた指先では全力投球は出来ない。投手だって7割の力しか出せない。足元が悪いから守っている野手はどうしてもスタートが遅れる。つまり、雨降りの日は安打の確立がグンと上がるんだ。雨の日は稼ぎ時だぞ。雨雨降れ降れ雨よ降れー」と選手たちに暗示をかけた。

 よく考えてみれば、雨のなかのコンディションは敵も味方も同じなのです。これぞ川上が放った"魔術"だったかもしれません。「だからわたしが監督になってからの雨天の試合では9割近く勝っていたんじゃないですか」と川上は呵々大笑していました。

立木 そのころの野球のほうが面白そうですね。

シマジ 今年はタイガースが低迷しているからタッチャンは機嫌が悪いんですよ。

立木 お黙り!

羽佐間 そうですか。立木さんは阪神ファンなんですか。

シマジ それも筋金入りのね。

立木 お黙り、シマジ。羽佐間さん、実際シマジは野球には全然興味がない男なんですよ。だから羽佐間さんの連載をなぞって質問しているだけなんです。