二宮清純 レポート 平野佳寿 オリックスバファローズ・投手 試合の流れを断ち切る技術

週刊現代 プロフィール

「先発はある程度、長いイニングを投げなければいけないのですが、平野は時折、集中力を欠くことがあった。大事なところでポカーンと打たれるんです。勝ち星が負けを上回れないのは、そういうところにも理由があったと思います。

 しかしリリーフなら短いイニングに気持ちを集中させることができる。彼の場合、ストレートがいいし、三振を取れるフォークボールもある。ハマった時の彼を打つのは容易じゃないと思いますよ」

 修羅場を仕事場とするリリーバーは1球で窮地を脱することもあれば、その1球が命取りになることもある。

 平野には苦い思い出がある。昨年10月6日のことだ。オリックスは埼玉西武とクライマックスシリーズ(CS)出場をかけて激しい3位争いを演じていた。

 この試合まで4位・西武とのゲーム差は4。勝てばCS進出が近づく大事な直接対決で、平野は9回、平尾博嗣にサヨナラ犠飛を打たれてしまうのだ。

 敗因は無死一塁の場面で4番・中村剛也に与えた死球だった。

 殊勝な面持ちで平野は振り返る。

「ぶつけたボールはフォークでした。これはショックでした。疲れもあったんですが、まさか、あんなに抜けてしまうとは・・・・・・。

 その後、満塁になって平尾さんには〝フォークが使えないなら、悔いなく真っすぐを投げて打たれたら仕方ない〟と思って投げたところ、それを狙い打ちされた。イチ、ニのサンのタイミングでやられました。

 これはいい経験になりました。死球を与えたからといってひるむ必要はない。どんどんインコースに突っ込んでいけばよかったんです。あるいは、もう1球、フォークを放るとか。死球を引きずらずに、あそこで気持ちを切り替えておけば・・・・・・」

 気持ちの切り替え---。インタビュー中、平野は何度かこの言葉を口にした。

 敗戦後、監督の岡田は平尾の犠牲フライの場面を指して、「あそこでフォークを投げる勇気がないと」と語った。

 平野はこのコメントを読んでいない。打たれた翌日の新聞には目を通さない主義なのだ。

「だって負けた後とか嫌な記事を目にすると引きずることもあるじゃないですか。これは精神的にマイナスになることはあってもプラスになることはない」

 前出の橋本も「気持ちの持久力」をリリーバーとして活躍する条件にあげる。