週現スペシャル 新・没落貴族 全財産失った元富豪たちの告白 最新版「おカネの哲学」------人生は何が起きるか分からない 連続インタビュー

週刊現代 プロフィール

 30年かけて辿り着いた地位も、失うときはあっという間。つい先日まで贅沢をしていただけに過酷な生活を強いられたはずだが、夫人はサバサバした調子で当時を振り返った。

「香港・上海時代は、今では考えられないほどの贅沢な経験もさせてもらいました。一番印象に残っているのは、李鵬首相(当時)にお招きいただいたときです。帰り際、私たちが車に乗るところまで見送りにきてくださいました。一国の首相が一介の商売人に対してここまでしてくださるのかと、感激で胸が一杯になりました。また、香港のスカイハイは室内に100席くらい入る部屋があったので、しばしばオペラやコンサートを催しました。コンサート後には高級ホテル『ペニンシュラ』から料理人を呼んで調理させる。日本からふぐを空輸して、板前に料理させてお客様に振る舞ったこともありました。あれだけの体験をさせてもらったことを思えば、今少しくらい大変でも主人に文句は言えません」

 和田氏も悲観しているわけではなく、今も意気軒昂だ。83歳にして、新たなビジネスにも取り組み始めている。中国政府が内陸部の拠点として重慶で進めている高速道路に併設する超大型SAの施設設計や店舗誘致などのコンサルティングを、和田氏に要請してきたのだ。この9月には、具体的な協議が始まる。

「体は年をとったが、頭の中はヤオハン時代と変わりません。倒産以後は食べていくので精一杯ですが、それで苦しいとか辛いと思ったことは一度もない。むしろ日常の雑務がない分、新たなビジネスを考えることに集中できるから、かえっていいアイデアが浮かんでくる気がするくらいです。信じられないかもしれませんが、これまでの人生で今が一番充実しているかもしれません」

日本で一番ポンドを持つ男

 和田氏のタフさには驚かされるが、皆が皆このような心境になれるわけではない。100社以上の企業再生にかかわり、「再建弁護士」の異名をとる村松謙一氏は、「新・没落貴族」とでも呼ぶべき彼らの「転落」の特徴を、こう語る。

「いろいろな資産家を見てきましたが、没落した方たちに共通するのは『見栄』や『我欲』が強いことと、『情』に欠けることです。世の中には信じられないような大金持ちがたくさんいますが、身の丈を超えて見栄を張った方は、5年、10年、20年と見ていると、だいたい没落していきます」

 たとえばこんな事例がある。誰もが知っている老舗食品会社の社長は、超のつくワンマンで知られていた。送迎車の運転手が道を間違えると、後部座席から足で運転手の頭を何度も蹴りながら、「馬鹿者」などと罵倒する。社員の首切りなどは日常茶飯事で、周囲にはおべっか使いしかいない。ところがその会社が倒産。その事情と経緯を社長が全社員に説明することになった。その説明会に出席した元社員が語る。

「もう全員が豹変ですよ。『どういうことだ!』『ちゃんと説明しろ!』と、それまで従順に仕えていたはずの社員の怒号が渦巻いた。逃がしてなるものかと会議室の出口を机や椅子などで封鎖して、社長に対するすさまじいつるし上げが始まりました。中でも送迎の運転手がすごかった。社長を呼び捨てにして胸ぐらをつかみ、殴りかかりましたからね」