第12回はこちらをご覧ください。
スミスの分析で、経済発展のために必要な要素は「分業」と「資本蓄積」です。政府はこのうち、「資本蓄積」を妨害しているのです。
スミスの考えでは、政府が「余計なこと」をすることで、経済発展が妨げられていきます。では、政府はどのように経済発展を「妨害」しているのでしょうか?
まず考えるべきなのは、「資本蓄積をするのは誰か?」ということです。
資本を蓄積するのは、「資本家」です。現代の感覚では「企業」といった方がわかりやすいかもしれません。資本家(企業)がビジネスを展開して利益を上げ、最後に余ったものを蓄積します。
ということは、政府が資本家に課税して、「蓄え」を取り上げてしまうと、蓄積が起こらなくなるということになります。
これが、「政府が資本蓄積の邪魔をする」ということです。
現在の政策は政府が国民からお金を集め、そのお金を使って景気対策をしています。
たしかに「ケインズ経済学」で考えると、政府の支出も「需要(有効需要)」になるため、政府が徴税し、代わりにお金を使うことで景気を刺激することができる、ということになっています。
そのため、企業が自社内に資本蓄積するのと、政府が代わりに使うだけで、本質的には同じでは? と感じるかもしれません。
しかし「同じ」ではないのです。なぜか?
それは、自分のお金をどう使うべきかを知っているのは、自分自身であり、それを国家が代わりに判断できると考えるのは、傲慢にすぎないからです。
次にどのような商品(富)を生産すべきか、そのためにどのように資本を蓄積すべきかは資本家本人が一番よくわかっています。
それが「正解」でなかったとしても、政府が代わりに「よりよい判断」ができるわけではありません。それがスミスの主張です。