需給によって料金を変動させ節電をうながす「ダイナミックプライシング」には課題山積み!『北九州スマートコミュニティ創造事業』を視察して

地域節電所の管理パネル(富士電機製)

 料金を変動させた世帯とそうでない世帯を比べたところ、平均で10から15%の節電効果があることが判明した---。

 需給を予測して機動的に料金を変動させることによって節電を促すダイナミックプライシングの実証実験として関係者の注目を集めている『北九州スマートコミュニティ創造事業』を、筆者は先週末(9月7日)に視察してきた。

 ここへきて、政府が付け焼刃で舵を切ろうとしている「原発依存度ゼロ」のエコ社会の実現には、本コラムで先週指摘した原発に代わる廉価で安定的な電源の確保に加えて、ダイナミックプライシングのようなピーク時の効果的な節電策も全国レベルで定着させることが不可欠である。

 その点、全国に先駆けて展開されている北九州市の実証実験は、新日本製鉄の八幡製鉄所の副産物である水素を燃料電池車のエネルギーとして転用することなども含めて大きな成果をあげているという印象を受けた。

 だが、これらを全国展開していくには、スマートメーターの標準化や地域の特性にあわせた多様な電源の開発、そして各地の気象予報に基づく弾力的なプライシングシステムの確立など、課題が山積していることも実感した。今週は、その視察のエッセンスをリポートしたい。

環境再生を果たした奇跡のまち

 先週金曜日(9月7日)のこと。朝8時を過ぎたばかりとは思えない真夏のような強い日差しを浴びて、噴き出す汗を拭いながら歩く筆者の眼前には、ところどころ空き地も目立つ埋立地特有の平らな土地が大きく広がっていた。

官営八幡製鉄所の創業記念モニュメント

 筆者が歩いていたのは、福岡県の中心地博多からJR九州の快速電車で約1時間の距離にある、北九州市の八幡東区の東田(ひがしだ)地区だ。

 ここまで言うと、日本史や地理に明るい読者はピンと来るかもしれない。あるいは、背後に迫る筑豊炭田を舞台にした映画『青春の門』を連想する人もいるかもしれない。

 そう、この地こそ、製鉄業の育成を目指した明治政府が、筑豊炭田と海に挟まれた立地条件の良さに着目、建設資金の一部を日清戦争の賠償金で賄って設立・創業した「官営・八幡製鉄所」(現在の新日本製鉄の母体)が産声を上げた土地なのだ。

 猛暑の中を歩く筆者から東に数百メートルの地点には、官営・八幡製鉄所の操業を記念する東田高炉史跡の巨大なモニュメントがそびえ立っていた。このモニュメントには、操業の年を示す「1901」の文字が誇らしげに掲げられている。

 誰もが知るように、この地は、日本の経済的な成功を支える4大工業地帯のひとつとして発展してきた。その半面、高度成長期に周辺地域が深刻な公害に直面した時期もある。北九州市によると、日本最初のスモッグ警報が発令されたり、多数のぜんそく患者が発生したのは、この地に隣接する城山地域だった。水質汚染もひどく、洞海湾は「大腸菌さえ住めない死の海」と称されたこともあったという。

 そうした歴史への反省もあり、北九州市や進出企業は、早くから環境の再生に取り組んできた。そのかいあって、「1980年代には、環境再生を果たした奇跡のまちとして国内外に紹介される」レベルまで回復していた。

 その後も、同市では、1996年に環境への負荷の少ない持続的発展が可能な都市づくりを推進する『アジェンダ21北九州』を策定したのに続き、1998年にはあらゆる廃棄物を他の産業分野の原料として活用して最終的に廃棄物をゼロにするゼロ・エミッションを目指し、資源循環型社会の構築を図る『北九州エコタウン事業』などの政策努力を続けてきた。

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