[MLB]
杉浦大介「ヤンキースの失速はいつまで続く?」

スポーツコミュニケーションズ

鍵握るA・ロッドら主力の働き

 ただ、その一方で“ヤンキースは大丈夫”説の根拠が“容易なスケジュール”だけだったとすれば、正直言って少々心許ない。失うもののない下位チーム、宿敵にだけは優勝させたくないレッドソックスは、大きな重圧を背負うであろうヤンキースにとって必ずしも楽な相手とは思えないからだ。

ロビンソン・カノーの爆発にも期待がかかる。

 それよりも、鍵となるのはグランダーソン、テシェイラ、ロドリゲスといった主力選手の復活だろう。8月に左足を痛めるまでのテシェイラは、チーム内で最も安定したペースで打点を叩きだせる打者のひとりだった。今週末には復帰が見込まれるこのスイッチヒッターが、ホームラン数ではチーム内最多のグランダーソンとともに復調できれば、打線に大きな心配は必要なくなる。

 5日のレイズ戦で貴重な打点を挙げたロドリゲスにも、今季の残り試合では打線の中央に君臨し続けてもらわなければならない。37歳になったA・ロッドはもうスーパースターと呼べる選手ではないが、それでも相手投手を警戒させる存在感は健在だ。この選手がいるといないとでは、やはりラインナップの厚みが違ってくる。

 イチローの電撃トレードでの移籍とチームの急降下がタイミング的に被ることから、その関連性を考える日本のファンもいるのかもしれない。外野の3つのポジションをハイレベルでこなしてくれるイチローも、チームにとって必要なピースではある。ただ、ほとんどの試合で8、9番を打つ選手が、チームの長い目での浮沈にそれほど大きな影響を及ぼしているとは考え難い。

 それよりもこれから先の1カ月では、投手ではサバシア、黒田、ロバートソン、ソリアーノ、野手ではデレク・ジーター、カノー、ロドリゲス、テシェイラ、グランダーソンといったメインのピースの貢献が重要になってくる。特に自身のスタンダードを上回るレベルの成績を残しているのはジーターくらいの野手陣が、これから先に要所で必要な得点を叩きだしていけるかどうか。

1年前、大逆転を喫したレッドソックスでは、フランコーナ監督がチームを去ることになった。

 1年前にレッドソックスがまさかの崩壊を味わった後――テリー・フランコーナ監督、セオ・エプスタインGMという重鎮たちが相次いで退団し、ボストンの1つの時代が終わった。もしも今秋、ヤンキースがまさかのプレーオフ逸といった事態になったとしたら、ニューヨークには何が起こるのか。レッドソックスと同じようにトップのすげ替えといった荒療治までは考えにくいが、大きな騒ぎになることは間違いあるまい。

 スリリングな予感とともに、2012年のMLBレギュラーシーズンはあとわずか。悲劇と背中合わせのプレッシャーが徐々に増す中で、2億ドルロースターの真価が問われることになる。

 ※断りのない場合、成績は現地時間6日現在。

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール>
1975年、東京都出身。大学卒業と同時に渡米し、フリーライターに。体当たりの取材と「優しくわかりやすい文章」がモットー。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシング等を題材に執筆活動中。
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