[パラリンピック]
陸上・春田、4年前に誓ったスタートライン

スポーツコミュニケーションズ

レースを楽しむ

「いやぁ、本当にすごいですよ。やっぱり、すごい! 世界の超人たちが集まる舞台ですからね」

 夢にまで見た世界最高峰の舞台。そのスタートラインに立った春田は前夜、妻とのメールを思い返していた。

「やっぱり緊張していては力は出せませんからね。楽しむことができれば、リラックスしているということですし、記録にもつながるということを嫁ともメールで話をしていたので、それを頭の中で整理していました」

 春田がレースを楽しんでいる様子がわかったのは、スタート直前のことだ。スタジアムの大型画面に自分が映っていることがわかると、超満員の大観衆に向かって両手をあげて応えた。
「オレもいるよ、ということをアピールしたんです(笑)。それだけリラックスしていたということだと思います」

 スタートは自らも「良かった」と評価した通り、世界との差はほとんどなかった。前半は力強い走りで、超人たちと互角に渡り合った。しかし、勝負は後半だった。加速していく他の選手たちとは裏腹に、春田は最後の伸びがなかった。徐々に順位が後退し、ゴールした時には後ろには誰もいなかった。タイムも昨年5月の大分陸上でマークした自己ベスト11秒95に遠く及ばない、12秒69だった。

「スタートと前半の走りは良かったんですけど、後半は他の選手との身体的パワーの差が出てしまいました。横に並ばれた時に力んでしまって、後半はうまく足をさばけなかった。タイムも伸びませんでした」

 そう反省の言葉を述べた春田だったが、表情は充実感に満ちていた。決してタイムには満足はしていない。実力を出し切ったとも言い切れない。それでも、目標としていた舞台のスタートラインに立った。その達成感は、何ものにも代え難い喜びであったはずであり、今後の彼にとって大きな財産となるに違いない。

(斎藤寿子)

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