出口治明(ライフネット生命社長)×山田まさる 【第2回】
「すべての企業はソーシャルです。だからこそ楽しい会社が勝つのです!」

出口治明さん(ライフネット生命保険株式会社代表取締役社長)と山田まさるさん(株式会社インテグレート取締役COO)

第1回はこちらをご覧ください。

山田: 社長はいつも歴史のお話というか、圧倒的に長いスパンで物事を考えておられるんだな、ということは著書を読んでいて感じます。100年で業界ナンバーワンになるとおっしゃっていますが、企業や事業を考えるときの歴史観として企業の寿命はどう考えてらっしゃるんですか?

出口: 僕は会社は子供と同じだと考えています。だから、なぜ100年で世界一なのかと言えば、今赤ちゃんが生まれたと考えると、平均寿命が80年くらいなので、普通の親なら子供には平均寿命くらいは生きて幸せな人生を送ってほしいと願うのが当然だと思うのです。ライフネット生命はいわば僕の子供ですから、80年は生きてほしいということなんです。でも80年というのは語呂が悪いので四捨五入して100年と言っているのです(笑)。

 それで、今度はその100年というのはどういう時間だろうというのを歴史から考えてみたら、明治生命が日本に生命保険を導入して、日本生命がバブルの時代に世界一になるまでに、約100年かかっているんですよ。

 かつて日本人が実現したことがあるんだから僕たちにもできないはずがない。、「100年後に世界一」という目標はそういう意味で決めたのです。

「子供と同じだから、100年くらいは生きてほしい。100年もあればかつて日本人が達成した前例もあるんだから世界一になれないことはない」ーー会社の目指すところはそれだけですね。

 最初の1世紀はそれで生きてみて、そのあとどうなるか。王朝になぞらえて考えれば、この会社が300年続くか500年続くかはもう運命ですね。100年以上先に世代交代がキチッとできるかどうかなんて、それはもう人智を超えたところにあるので、そんなことを考えてもしょうがない。一所懸命子供を育てていくことが、ぼくが出来ることのすべてです。

 従業員80人の意志の集積がこの会社を動かしていくのであって、僕にできるのは一所懸命それを育てることだけですね。

社会的企業という言い方は嫌いです

山田: なるほど。前回の冒頭でソーシャルマーケティングという言葉を使わせていただきました。TwitterとかFacebookとかブログという側面のソーシャルという部分と、もう一方でたとえば出口社長がおっしゃっている、自助と公助と共助というものがあって、生命保険をある種共助と位置づけられているところがあると思うんです。社会との関係のなかで企業のあり方やマーケティングを考えていくということなんでしょうね。

出口: それはすべての企業がそうであって、企業はどんな業態であれ社会を離れては生きていくことができません。すべての企業がソーシャルであると思っています。

 社会の役に立つもので、普通の市民が「この会社やサービスがあったほうがいい」と思う会社は残っていく。そうでない会社は滅んでいくだけというのが、人間が過去5000年の間に行ってきたことです。どのような企業であっても、そういう意味での社会性抜きには生きていくことができない、というのが僕の考えです。ソーシャル企業とか社会的企業という言葉は、僕は嫌いだと公言しています。

 何故かと言うと、それでは企業の社会性が矮小化されてるからです。ものすごく儲かった会社が儲けの一部で木を植えるとか、そんなことにはほとんど意味がない。単なるドレッシングだ、と。企業は本来の企業のあり方として、本業で作るものが社会にどれだけ役に立つのかが決定的に重要で、それはお客さまが結果的に選んでいくものだ、というのが僕の基本的な考えです。選ばれるのは何も商品やサービスだけではなく、会社のあり方全体が選ばれるのだと思っています。

山田: 同感です。まさに本業の中で、世の中に役立ち、選ばれるということだと思います。顧客との関係だけでなく、世の中との向き合い方で、採用や人材登用という面では、どんな風にお考えですか。

出口: たとえば、われわれはワークライフバランスとよく言っていますが、「青田買い・終身雇用・年功序列・定年というワンセットのガラパゴス的な雇用慣行」というのは、よく考えてみると、高度成長と人口の増加があってはじめて成り立つ特殊な仕組みなんですね。そうすると、低成長で人口が減っていく、グローバルな競争も激化していく、そういう状況のなかでのあるべき労働慣行は何かと言えば、「国籍、年齢、性別フリーで同一労働同一賃金」というのがおそらく人間の歴史で見る限り正しいと思っています。

 ライフネット生命は、国籍、年齢、性別フリーですので、今年の4月から中途採用した社員のなかには還暦を超えた人間が2人います。若い会社ですけれども、スペックさえ合えば年齢フリーですので、還暦を超えても正社員として採用しています。それから新卒採用も行っていますが、条件は「30才未満、論文」です。回り道をしていろいろな社会経験を積んだ方は大歓迎です。選考では、われわれは字数無制限の難しいテーマを二つ与えて、その論文だけで最初の選考を行っています。

 会社の社会的責務や社会性というのは決して商品やサービスだけではなく、社会に合わせてどういう理念で会社を経営し運営するか、それは採用もそうであり、株主総会もそうであり、会社のなかもそうであり、それは理念でありコアバリューであり、すべてが普通の市民から見てこういう会社が増えてほしいと思った会社は伸びる、そうでない会社は滅びていく、それだけのことだと思いますね。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら