二宮清純レポート日本球界・最速のサウスポー吉川光夫(24歳・日本ハムファイターズ)選手を「大化け」させる言葉の魔術

週刊現代 プロフィール

 福岡で生まれた少年は広島で鍛えられ、札幌でプロになった。鮮烈なデビュー、長い低迷、そして復活。斎藤が二軍落ちした今、チームを支えたいとの思いは、誰よりも強い。

 壁に突き当たり、もがき苦しんでいた頃、兄貴分のダルビッシュから、こんなアドバイスを受けた。

「配球をキャッチャー任せにせず、自分で考えろ!」

「5回3失点とか7回3失点とか、勝手に自分でイメージをつくるな!」

 ダルビッシュの言葉は、吉川にとってどれもが新鮮だった。

「配球については、確かにキャッチャー任せにしていた部分がありました。でも納得がいかなければ(サインに)首を振る勇気も必要なんですよね。

 先発の役割について、これまでは〝最少失点で切り抜ければいい〟と思っていました。でも、それじゃダメだと。〝常にゼロに抑える気持ちを忘れるな〟と言われてから、バッターに強い気持ちで向かっていけるようになりました」

 あるブルペンキャッチャーは変身の理由を次のように語る。

「去年と今年の一番の違いは気持ちの余裕ですね。去年は目の前の1試合で結果を残さなければいけないという気持ちが強すぎて余裕が感じられなかった。追い詰められていましたね。

 ところが今年は気持ちに余裕があるせいか、ブルペンでも調子の波があまりない。試合前も落ち着いていて頭が突っ込んでいないかとか、バランスを考えながら1球1球投げ込んでいますね」

 他球団のバッターにも話を聞いた。千葉ロッテの角中勝也は独立リーグ(四国アイランドリーグ)出身で売り出し中のアベレージヒッターだ。吉川とは二軍のイースタン・リーグでも対戦している。

 8月17日の対戦では2安打を放ち、大胆にも「(吉川のボールは)スピードガンよりも遅く感じた」と発言したと報じられた。

 それは本音なのか。

「いや、あれはたまたま自分の調子が良くてボールがよく見えただけ。二軍時代と比べると、トータル的にすごいピッチャーになっていますよ。ストレートはもともと速かったのですが、さらに速くなった。

 それに変化球でもカウントが稼げるようになってきた。以前ならストレート待ちで勝負できたんですが、今はそれができない」

 また、あるパ・リーグの主力バッターは匿名を条件に次のように明かす。

「特に厄介なのがカーブ。ストレートに威力がある分、緩急をつけられると対応しにくい。低めに決まると本当に打ちづらい」