馬場康夫(ホイチョイ・プロダクションズ)トークライブ【後編】「若いやつが、そんなに自分というものを持ってどうする。『空っぽの器』でいいじゃないか」

 この近所のトランジットジェネラルオフィスの中村貞裕さんという方が『中村貞裕式 ミーハー仕事術』という本を書かれて、これは素晴らしい本なんですが、僕は著者の中村さんとつい最近知り合ったんです。この方は僕のイメージでは空っぽの器で、もちろん良い意味ですが、自分というものが何もない。今うちの事務所で働いているマンガ家の卵たちと接していると本当に思うことなんですが、「まだ20代の前半なのにそんなに自分というものを持ってどうするんだよ」と。

 空っぽの器でいいじゃん、ということで、逆に昔は東京ウォーカー世代が自分というものがなさすぎて問題になったんだけど、でも、空っぽの器だったら何かができたらすぐすっ飛んでいくわけです。新しいものができたらすぐに行こう、ということが、今の若い人たちは空っぽの器に何かを入れていくというのではなくて、自分がどういう人間になろうかと思っているような時代なのかな、と思って。

 中村さんと話をしたときにもそう言ったんだけれども、「いや、僕は空っぽの器ですからね」と言ったら「そういう人をミーハーって言うんでしょうね」と言っていて、考えてみたら、ミーハーだっていいんじゃないかという感じですね。伊丹十三なんて、あんな中身のある人はいないんですが、だけど彼自身は自分を空っぽの器だと言っていて、それは別に卑下しているわけでも何でもなく、そう思われていたみたいですよ。

松嶋: お父さんともいろいろ葛藤があったような話ですよね。

馬場: 伊丹万作監督ですね。黒澤明と並ぶ巨匠ですからね。

松嶋: でも、この本は中身がありますので、どうぞお買い求めくださいということで(笑)。

馬場: 空っぽの器が書いているからと言って、言っていることが空っぽということではないですね(笑)。しかしこれ、「どんな人でも必ず成功する」という惹句はコンプライアンス的に大丈夫なのかな(笑)。

松嶋: でもこれは、すぐに真似ができますものね。