著名人10人が薦める「私の人生を変えた、この1冊」

フライデー プロフィール

「うーん、発生したことに対処していくだけですよね」

 と、あくまでも飄々と答える西村氏。これも〝人生を変えた1冊〟に出会ってしまった効果なのかもしれない。

「ヴェニスの商人の資本論」岩井克人 著

藤原敬之(投資家)
1959年、大阪府生まれ。農林中央金庫、野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)、クレディ・スイス投資顧問(現アバディーン投信投資顧問)などで日本株の運用を担当。近著に「波多野聖」名義で発表した経済小説『銭の戦争』など

「個々の具体的な事象をいくつかのキーワードでまとめて頭の中で抽象化し、そこから普遍的な論理を導き出す。この本を読み終えた時、自分は遂に思考の武器を手に入れたぞ!と感じました」

 元ファンドマネージャーの藤原敬之氏(53)はそう語る。かつて『野村投資顧問』『クレディ・スイス』といった大手資産運用会社を渡り歩き、累計1兆円の日本株運用を手掛けた〝カネ儲けのプロ〟が挙げた1冊は、経済学者・岩井克人のエッセイ集『ヴェニスの商人の資本論』(筑摩書房刊)だった。

「読了したのは'92年頃、野村投資顧問で働いて2年目の夏でした。それまでの僕は、欧米顧客向けの運用者コンペに出されたものの連戦連敗でして・・・・・・」

 英語のプレゼン内容を事前に必死で暗記して現場に臨んでいたが、まったく成果が出ないままだったという。

「英語力の問題ではなかったんですよね。自分の考えではなく、会社のハウスビューをそのまま語るだけだったから、信頼を獲得できなかった。思考力を鍛える必要性を痛感しました」

 藤原氏は、書籍の乱読を通じて答えを探そうと試みる。そこで手にしたのが同書だった。

「『ヴェニスの商人』は16世紀の戯曲。これを題材に〝貨幣・経済・利益とは何か?〟という普遍的問題を論じていたわけです。考えるという行為はこういうことだ! 目から鱗が落ちた思いでした」

 結果、彼は「思考の武器」を手に入れる。効果はすぐに目に見えて出た。

「自分の思考を積極的に伝えたことが外国人の感覚にマッチして、コンペに勝てるようになった。その後にクレディ・スイスに移籍し、200億円のファンドを4年間で2200億円まで増やしたのですが、これも欧州中からおカネを集められたから。自分の確固たるビジョンを語ったことで、海外投資家が僕を信頼して財産を預けてくれた」