著名人10人が薦める「私の人生を変えた、この1冊」

フライデー プロフィール

「歴史学はイマジネーションが重要。いかに真実を見つけるかに加えて、それを魅力的に他の人に伝えるにはどうすべきか。一番気にかけていきたい問題です」

 一冊のSFが、青年の発想力を大きく飛躍させ、気鋭の研究者を誕生させた。

「銃・病原菌・鉄」ジャレド・ダイアモンド 著

西村博之(実業家)
1976年、神奈川県生まれ。'99年に大規模掲示板『2ちゃんねる』を立ち上げ、'00年代のネットシーンをリード。'09年に管理人を〝返上〟し、以降は著述活動や『ニワンゴ』などの企業経営にて活躍する

「この本を読んで分かったのは、世の中に絶対的に正しいことはないってこと。また、いわゆる〝成功〟をするのに個人の才能は関係ないんだなと感じました」

 そう語るのは、大規模掲示板『2ちゃんねる』の元管理人、「ひろゆき」こと西村博之氏(35)だ。'00年代以降の日本のネットシーンのパイオニアとなる一方で、『2ちゃんねる』にまつわる大量の民事訴訟や賠償債務を抱える同氏。「ネットの闇を作った元凶」扱いされることも多いが、そんな彼が選んだ一冊とは?

「'00年に刊行された、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』(草思社刊)です。内容は平たく言うと、欧州が歴史の勝者になったのは欧州人が優秀だからではなく、地理的・環境的な要因によるものだと説明した本。欧州は農産物や家畜を大量に生産できたので、戦争に多くのエネルギーを向けられた。しかも人口が密集していて疾病への免疫力が高かったから歴史の勝者になれたんだ、と。現代の世界が意外とテキトーな理由で出来上がったことが分かる1冊ですよね」

銃・病原菌・鉄
ジャレド・ダイアモンド 著

 同書は'10年の朝日新聞の読書企画「ゼロ年代の50冊」において識者間投票で人気第1位に選ばれ、近年も話題になった名著。ともすればお堅い内容の本を、ここまでユルく解釈するのは西村氏ならではだろうか。

「あまりにも大きな問題に対して、個人は無力な存在に過ぎないんだという思いが、読了後に一層強まりましたね。最近の例で言えば、リーマンショックや震災を前に、個人のコツコツとした努力なんてムダになっちゃう。起こった事実を受け入れて生きていくしかないですね」

 彼がもともと持っていたニュートラルな価値観は本書を読んで一層強まった。

 今年5月には警視庁による『2ちゃんねる』撲滅作戦が一部メディアで報じられ、西村氏への逮捕は秒読みだというキナ臭い噂も囁かれる。いざ、そんな事態が起きた時にはどうするのか?