「ライオンに対して、何をどこまでやるのが許されるのか知りたい。油断すると自分が食べられちゃうけど、食べられないための知識を得たい。俺にとって、動物を飼うという行為の集大成ですね」
ボロボロの図鑑が開いた知識と好奇心の扉。愛する動物を一層深く理解するため、彼は今日も己の肉体をぶつけていくのだ。
「最近、いじめ問題などで世間が騒がしいので、なおさら感じるのですが、私たちが生きていく上で一番重要なのは人間同士の関係だと思うんです。人は他人によって傷つくけれど、他人に助けられる存在ですから」
〝食プロデューサー〟を自任する料理研究家の園山真希絵氏(34)はそう語る。
そのコケティッシュな容姿とアイディアに溢れた斬新な創作料理で、世に知られる存在となった園山氏。そんな彼女が挙げた1冊は、作家・五木寛之のエッセイ『人間の関係』(ポプラ社刊)だった。
「私のお店(恵比寿の家庭料理割烹『園山』)が開店した'07年でしたね。当時は初めての店舗経営で、すべてが手さぐり状態。人づき合いがヘタなもので、従業員やお客様への接し方に試行錯誤してました。そこでこの本に出会ったんです」
園山氏はもともと、子供の頃から他人と関わるのが苦手で、孤独を好むタイプだったという。そんな彼女を変えたのが、この本だったという。
「開店直後は、信頼していたスタッフにおカネを持ち逃げされたりして、精神的にドン底だったんです。でも、私がここでお店を辞めてしまったら、従業員たちが生活できない。ひたすら私が頑張ればいい、なんて思っていました。そんな時に読んだこの本の 『他人同士から始まる人間の関係こそ、生きる上で重要なのだ』というメッセージに心を打たれたんです。ああ、実は私に足りないのは、他人との関係に配慮する姿勢だったんだ、と。そんな気づきを与えられてハッとしました。あと、ちょうど読み終えた頃に、著者の五木さんが私のお店に偶然いらして、食事をしてくださった。そのことにも運命を感じました」
試練を乗り越えたことで、これまでは〝自立〟していると思っていた自分が、多くの人に助けられて生きていることに気づいたと話す。