取材・文▶ 安田峰俊(ノンフィクションライター)
「2000本安打を達成して以来、周囲から『おめでとう』とか『よくやったな』と声を掛けていただく毎日で、気を良くしていたんです。でも、達成した翌月にこの本を読んで気づかされました。記録を残すことが偉いわけではない。自分自身への謙虚さを忘れずに人生を歩むのが大切だと」
今年6月、度重なる故障を乗り越え、名選手の証である2000本安打を達成した福岡ソフトバンクの小久保裕紀内野手(40)。そんな彼が挙げる「人生を変えた1冊」は、比類なき過酷さで知られる比叡山延暦寺の千日回峰行を2度も成し遂げた酒井雄哉が著した『一日一生』(朝日新聞出版刊)だった。天台宗の大阿闍梨の著書から、ホークスの主将は何を感じ取ったのだろうか。
「自分にとっての〝戒め〟となりました。筆致から伝わる酒井さんの人柄は、偉業を成し遂げた人間とはとても思えないほど自然体なんです。偉ぶらずに、語りかけるように読者に物事を伝える姿に共感を覚えました」