大反響「新・富裕層」の研究番外編 「私はこうやって莫大な資産を手に入れた」「新しい金持ち」と「名門の金持ち」がその仕事と生き方を語った!

週刊現代 プロフィール

9代目当主の華麗な経歴

 生きている時代をしっかり見据えつつ、先祖から受け継いできた精神も守っていく。一代で財を成すのも大変だが、こちらも至難の業だ。けれども、これができなければ「老舗」や「名門」は消えてなくなる。

 高知市から西へ約25km。江戸時代に建てられた商家や酒蔵が並び、当時の風情を残す佐川町の老舗・司牡丹酒造も、そうやって時代を乗り越えてきた。

 司牡丹の歴史は、今から約400年前の江戸時代最初期に始まる。蔵を守ってきた竹村家は高知を代表する旧家で、代々酒造業を営む有力商人だった。

 現社長の竹村昭彦氏(50歳)が社長に就任したのは'99年。日本酒離れが進み、地方の造り酒屋が次々と廃業していく逆境の時代だった。それだけに、「酒で天下を取る」という志のもと、司牡丹を飛躍的に発展させた曾祖父・源十郎の生き様を強烈に意識している。

「源十郎はいわば司牡丹を創った人で、凄まじい情熱を酒質向上に注ぎました。その結果、司牡丹は絶大な評価を得て全盛期を迎えるのですが、戦争で経営が危機的な状況を迎えた。酒米の確保が困難になり、生産量が平時の10分の1にまで激減したのです。当時、『金魚酒』という粗悪な酒が出回りました。金魚が泳げるほど薄い酒という意味ですが、源十郎は『生産高を落としても酒質は絶対落とさない』という方針を貫いた。苦しいときこそ妥協しないという精神が、司牡丹の精神なのです」

 昭彦氏の金銭哲学についてたずねると、またしても曾祖父の話になった。

「源十郎の人生を振り返ると、お金に対する執着がない。いくらお金があっても、後継者が突然死んでしまうこともある。お金より大事なものがあるということなのでしょう。こうも言っています。『酒は生きている。造る人の精神が、そのまま酒に移る』。だから、お金ではなく人なんです」

 代々続く名家はモノ作りの老舗企業である場合がほとんどだ。ITや金融業などでお金を稼ぐ新富裕層とは、その業態においても大きな違いがある。それはモノ作りの伝統が薄れている現代日本の姿を象徴しているのかもしれない。

 名門富裕層の中には、地域への貢献など、公益のために私財を投じる一族も多い。愛知県豊田市の名家として知られる古橋家もそのひとつだ。当主は代々「源六郎」の名を世襲する。

 9代目で現当主の古橋源六郎氏(80歳)は東大法学部を卒業後、大蔵省入省。総務庁官房長や総務庁事務次官を歴任してきた。その人生は、「公益のために尽くす」という家訓によって終始律せられている。

 歴史が古橋家の生き方を証明している。日本中に餓死者が溢れた天保の大飢饉(1833年)のとき、古橋家は私財を投げ打って村人を救済し、ただの一人も餓死者を出さなかったのだ。