大反響「新・富裕層」の研究番外編 「私はこうやって莫大な資産を手に入れた」「新しい金持ち」と「名門の金持ち」がその仕事と生き方を語った!

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 しかし、新富裕層が目指すところはそこではない。彼らは身の回りの人脈とスキルを駆使してビジネスを回し、一代限りの成功でよしとする。

 自分の子や孫の世代には、その世代なりの生活や仕事のやり方があると考えているし、自分たちの金儲けの手法は永続的なものではないという思いもある。きわめてドライ。だが、それは一面の真実でもある。

 現に前出の本田氏は、日本の富裕層は10年から20年のスパンで入れ替わるものだと指摘する。

「たとえば1945年には農地改革などで代々の地主はいなくなってしまった。'65~'70年のベトナム特需もその後の不況でリセットされているし、'80年代のバブルで不動産を買い漁っていた人は、'90年代に破産していきました。さらに'90年代に金持ちだった人は、ITバブルの崩壊で一斉にいなくなり、それを乗り越えた富裕層はリーマンショックで消えた。富裕層であり続けるということは、非常に難しいのです」

京都の老舗の家訓

 彼ら新富裕層とは対照的に、生まれながらにして莫大な資産を守ることを義務付けられた人もいる。先祖から受け継いだ資産を守り、祖業を継承・発展させてきた「名門」の後継者である。「新しい金持ち」とこうした「名門の金持ち」では、仕事や生き方の哲学も当然異なる。では、ここからは「名門の金持ち」たちを紹介していこう。

 土井志ば漬本舗は明治34年創業の京都の老舗だ。現在の店舗数は23、総売上高は約17億円。

 温故知新ではなく「温故一新」---古き良きものを大事にしながら、新たなものにも取り組んでいくというのが、同社の経営理念だという。5代目当主で社長の土井健資氏(49歳)が言う。

「家訓として書かれたものはたくさん残っています。一つ挙げると、『堅実こそ最良なり。作るは売れ得る内にてなす。力以上に作り売る為に苦労するは、利をなくする最大原因なり。常に心する事』。要は、あまりいらんことをしたらアカンということです(笑)」

 当然ながら、新富裕層には家訓というものは存在しない。逆に言えば、だからこそ縛られることなく自由に会社を起こし、富を築くことができた。どちらがいい、悪いということではないが、健資氏が家訓を意識して家業を発展させてきたことは事実だ。若き日の健資氏がその重みを身に染みて味わった出来事がある。

「父がまだ存命のころ、私が夜の10時11時まで工場を動かしていたことがあるんです。非常に忙しかったのでそうしたのですが、そこに父が来て、全員を帰らせた。その後、『みんな家庭もあるのに、こんなに遅くまで仕事をさせて。働いている人を大事にしないのは本末転倒や!』と、すごい剣幕で叱りつけられました。それがたぶん先ほど紹介した家訓の意味するところなのでしょうね。『力以上のことをやって、大事なことを忘れている』ということです」