現代ビジネス×クオンタム流経営塾特別セミナー 出井伸之×吉田和正 第3回 「DRAMからCPUに移ったのもXYZからABCへの転換。そこには成功だけではなく失敗もある」

司会:磯山友幸(経済ジャーナリスト)

第2回はこちらをご覧ください。

磯山: 皆さん、今日はこのカタツムリのでんぐり返しみたいな図を、しっかり頭のなかに入れてください。これは非常に示唆に富んでいて、この1枚で大体のことがわかるし説明できる図ですね。

出井: これは二次元で描いたんですが、本当は三次元なんです。これは二次元だからこうなっているけれども、時間軸上ではXYZとABCが重なるんです。スパイラルで考えていくと、今のABCがどんどんXYZになって、そこでまたABCが出てくるということをずっとくり返しているわけです。

 ですから、皆さんの会社の歴史で、たとえばファウンダーがお父さんだとすると、お父さんがやったのはXYZなんですね。自分がやっているのは、XYZを良くしていくのとABCを作っていくことと二つあります。

 やるべきことというのはそんなにしょっちゅうは変わりませんから、これを考える場合には時間軸を入れて10年20年単位で変えていくということを考える必要があります。、一気にXYZがABCに変わるということはありません。決して過去の良さを否定して新しいことをやるわけではなく、過去の伝統の上で変化してくるわけです。インテルの場合、半導体技術が進歩するときは、XYZのなかで自然にテクノロジーが変化してくるので、ある程度ロードマップは読みやすいんですね。

吉田: それをわかりやすく言えば、XYZはCPUの価格が1個200ドルで、ABCは20ドルということですね。しかし、それを普通に考えると「利益率が下がるではないか、どうするんだ」となります。そうすると、XYZのほうが強いものですから、XYZをずっとやっていたら携帯電話に入るのが遅れてしまったわけです。それで今一生懸命携帯電話をやって、ようやく今年から入りましたが、ひょっとしたら「失われた5年間」ということになるかもしれません。

 XYZのビジネスが強くて、成功体験も強いのでなかなかABCにいかない、その間に世の中ががらっと変わってしまった。われわれも一生懸命にやって、ようやく追い着いたという状況です。

 ですから、成功だけではなく失敗もある。まさにこのモデルで成功もしていますし、失敗もしています。DRAMからCPUに移ったのもそうですよね。XYZからABCにいっていますから、大体インテルは43年間のなかで3回か4回、このモデルを経験しています。

悪者を作っても何も変わらない

磯山: XYZが強ければ強いほど、なかなかABCに転換するタイミングというのは難しいということでしょうか。

出井: 海外の例で言うと、たとえばノキアなんかは携帯電話の分野でもう圧倒的なシェアがあったわけですね。それでも、中国ではノキアのマーケットシェアがかなり落ちているでしょう。それはスマホに乗り遅れたからですよ。

 スマホに乗り遅れたのはノキアだけではなくて、ノキアの子会社が作ったSymbian OSを使っているところは軒並み遅れてしまった。マイクロソフトも遅れて急転換していますね。そういう意味ではみんな一線に並んだんですから、あまり日本は悲観することはないと思うんです。

 このABC-XYZモデルは全部の会社に当てはまります。たとえば今クルマを作っている会社はXYZですよね。じゃあ、本当に電気自動車を作ることだけがABCかと言うとそうではありません。。今ドイツではディーゼル車をやっていますよね。それから排気量を下げてターボをやらせて、このXYZを生き存えさせることでものすごく競争力のあるクルマを作っています。

 日本は電気自動車が強いというけれど、電気自動車を売ってもあんな巨大な自動車会社の付加価値になるのかという問題がある。さっき吉田さんがおっしゃったように、100ドルのものが20ドルになった場合、企業のサイズから考え直さなければならないとなると、そんなにでかい会社が次のテクノロジーにいってそんなに付加価値が付けられるんですか、という問題にぶち当たるわけですね。そこが経営そのものだと思うんですね。

磯山: どんな産業にもどんな企業にもこれは当てはまるということですね。

出井: これは人間のやることには全部当てはまります。もう一つ言わせてもらうと、最初に平内さんが痩せたという話をしましたが、痩せたのは随意筋を動かして自分で命令して「2キロ体重落ちろ」と命令したからじゃないんですよ。そんなことでは体重は落ちない。ちゃんとプログラムを組んで、食べるものから運動から考えて、それをやってから痩せるんです。

 それと同じことで、XYZがABCに変わるということは、単なる命令では動かないということです。会社の組織そのものを変えてゆっくりとやっていかない限り、人間の体重さえコントロールできないものなのに、企業の体重がトップの命令一つでそんなに変わるものではありません。ところが、日本では何かがあると誰かを悪者にしたがるから、誰それという社長が悪いからダメだったということになりますが、そういう問題じゃないんです。

 日本の産業そのものがこのXYZからABCへの転換に直面しているにもかかわらず、新聞やメディアでは誰それが悪いと個人名で言うのがものすごく好きな国なんです。それは組織が遅れているだけのことなんですが、名指しで個人の責任にしてしまうというのは、成長期にはないことですね。

磯山: やはり成長が止まって、問題を内向きに解決しようとか、内向きに悪い人を見つけようとか、そういう感じになっているんですかね?

出井: そうですね。これを子供で考えてみると、10才の子供はこのXYZとABCを自然にやっていて、どんどん新陳代謝も活発に行うし、読んでいく本も変わっていったり、学校でも進歩していくし、小中高と段階を追って進歩していきます。これが大人になると学校も何もなくなってしまうから、指針がなくなってしまうんですね。

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