プチ帝国主義政策を展開し始めた韓国と、それを利用する中国の真性帝国主義

佐藤 優 プロフィール

挑発を跳ね返す毅然たる国家意思を示すべき

 李明博大統領は、国際社会の支持を韓国に引き寄せることを意図してこの演説を行ったと見るのが妥当だ。竹島問題は、日本との二国間問題であり、一般論として、領土問題を先鋭化させることは国際関係の緊張を増すので、国際社会は領土ナショナリズムを煽る国家に対しては冷ややかな態度を取る。李明博大統領としては、竹島上陸という究極的なカードを日本に対して切ったので、「光復節」の演説であえてこの問題に触れる必要はないと考えたのであろう。

 そして、国際社会の韓国に対する同情と理解を深めることを狙って、慰安婦問題に関して新たなカードを切った。「2国間の次元を超えた戦時の女性人権問題であり、人類の普遍的価値に反する行為」と主張することによって、慰安婦問題とナチス・ドイツによるユダヤ人女性に対する虐殺、強制避妊手術、人体実験などの「戦時の女性人権問題」を同列に扱うことを李明博大統領は、目論んでいる。

 日本が然るべき対応をしないと、韓国はプチ帝国主義政策を推進する。言うまでもないことであるが、客観的に見て、日本は韓国を凌駕する国力を持つ。日本の政治エリート、国民はともに日本国家の力を過小評価する傾向があるが、国際基準で日本は米国、EU、ロシア、中国と肩を並べる帝国主義国だ。韓国のプチ帝国主義的政策を抑え込むことは、それほど難しくない。

 まず、国権の最高機関である国会が「竹島返還に関する決議」を近日中に採択することだ。それとともに、2005年に島根県が条例で定めた2月22日の「竹島の日」を、政府が後押しする全国レベルでの行事にする。韓国の挑発を跳ね返す毅然たる国家意思を、政府、国会、国民が一体となって示すことが重要である。

 同時に中国の尖閣諸島に対する戦略にも細心の注意を払う必要がある。本物の帝国主義国である中国は、韓国がプチ帝国主義政策によって竹島問題で日本を挑発している事態を最大限に活用しようとしている。8月15日、尖閣諸島に香港の活動家らが上陸したが、ここで日本政府は、尖閣問題と竹島問題のリンケージを考慮した上で、国際社会の理解を得られる外交戦略を構築する必要がある。

 領土問題に関しては、

①双方が領土問題が存在していないとする場合、領土問題は存在しない
②双方が領土問題が存在するとしている場合、領土問題は存在する(北方領土に関しては、日露両国が領土問題の存在を認めている)
③一方が領土問題は存在するとし、他方が領土問題は存在しないとする場合、客観的に見て領土問題は存在する

 という3つのケースが存在する。

 竹島問題に関しては③のケースに該当する。日本は領土問題が存在すると主張し、韓国は領土問題が存在しないと主張している現状を、第三者が客観的に見る場合、領土問題が存在することになる。それだから、ICJ(国際司法裁判所)への提訴を含む交渉による問題の解決を韓国に対して訴えている。