現代ビジネス×クオンタム流経営塾特別セミナー 出井伸之×吉田和正 第2回 「リーダーシップとは、ブレない思想でリスクを取るところを決めて時間軸を示すこと」

司会:磯山友幸(経済ジャーナリスト)
〔左〕出井伸之氏(元ソニーグループCEO/現クオンタムリープ代表取締役)、〔右〕吉田和正氏(インテル代表取締役)

第1回はこちらをご覧ください。

出井: 広告の世界でいうと、実は今は最大の広告会社というのはグーグルなんです。そういう意味では、グーグルができたときに検索エンジンの会社という位置づけをすると、Googleが広告会社としてこんなに収入を得ることになるとは思えなかったし、考えられなかったじゃないですか。

 グーグルのようなサービスを提供する会社は、残念ながら日本から生まれたものは1社もないんです。なぜ日本ではそういうサービスが出てこなかったのか、検索エンジンの会社がここまで発達しなかったかと言うと、元々検索エンジンというのは、あらゆるコンテンツにインデックスをつけるんですが、。それを日本でやると著作権の侵害になるということで、日本にサーバを置いてはいけないことになっています

 それはお役所がXYZで判断するからで、検索のための番号を振るだけで著作権侵害と位置づけるという発想の古い国が日本なんです。ですから、日本では検索エンジンの会社は存在しないんですが、それを実現するテクノロジーはたくさんあります。そういう面で、僕が日本が非常に残念だなと思うのは、そういう法律があるからやってはいけないと思うとみんなやらないんですね。でも、今のルールを壊す会社がないとイノベーションが起こらないんですよ。

 それはルール違反でもやってしまおう、というくらいの元気がないといけないと思うんです。日本でダメなら韓国にサーバを置いてもいいし香港に置いてもいいじゃないか、と。そういうのがグローバライゼーションなのであって、英語を習うことじゃないんです。Think Grobalというのは、たとえば「日本のマーケットのためにどうやってグローバルのリソースを使うか」という発想をするべきなんです

 今の吉田さんの話を聞いていると、どんどんテクノロジーが進歩してきますよね。どういうふうにそれと皆さんの仕事やお客さんと関係づけるか、という問いを持って、その解としてABC見つけようとすることがポイントだと僕は思うんです。何でもすべて関係づけて考えてほしいんですね、自分と関係があるぞ、と。そうするといろいろなことでどんどん新しいアイディアが生まれてきます。

 しかし、それをXYZの組織の人に命令しても意味がないんですよ。たとえば組織の部長さんというのは、組織を守るのに全力を尽くしているわけで、ABCをやるために会社員になったわけじゃないんですね。そこを間違えて、自分がABCをやりたいとXYZの人に滔々と演説しても、誰もわかってくれないというのは当然なんですよ。言うべき相手が違うんですから。

 そういう意味では、ものすごく小さくてもいいから、その新しいアイディアをまったく新しいグループにやらせてしまうべきです。それがABCの基本で、今の仕事で評価されている人に違うことを命令してはいけないというのがポイントだと思います。そこがわかってくると、たとえば今日の吉田さんの話を聞いた場合、将来の自分のお客さん動向はこうなっていくだろうというふうに解釈しなければいけないんですね。

安全・安心にはテクノロジーが必要

吉田: もう一つ僕がいつも危険だと思っていることがあって、それはまったくの一般コンシューマーにテクノロジーの話ばかりすると逆に不安がられるということなんですね。「そんなにテクノロジーが進んでしまって、私はついていけません」と、逆にそちらのほうが多くなります。不安で不安で仕方ない、というふうになってしまう。

 テクノロジーのもう一つの役割というのは、新しければいいというものではない。これからのキーワードとしては環境とかエネルギー、省エネということがすごく大事になってくると思うんです。先ほど申しあげた通り、時代によって産業の主役は変わってきています。その場合、「では情報産業やネットワーク、デジタルの次は何なのか」というふうに言われたら、おそらくエネルギーとか環境というようなところは一つ大きいのかな、と思います。

 それから、もう一つは安全・安心ですよね。日本の場合はこれから高齢化社会になっていった時に、日本の市場だけでは相当厳しい。企業は既に、ミャンマー、インドネシア、タイなどのアジア諸国に積極的に人を送り出しています。その一方、日本はどうかと言うと、高齢化に向かって世界一安全・安心な素晴らしい国造りというのが必要です。それには絶対テクノロジーが必要です。

 テクノロジーの位置づけというのは、以前までは生産性や効率性の向上が主役だったんですが、今はそうではないかな、と僕は思っています。これからのテクノロジーにはもっと大きな役割があって、それは地球規模の問題を解決したり新たな付加価値を生んだり、それからXYZからABCにいくきっかけを作って肩を押してあげたり、リスクだと思っているものをいろいろな形で低減してあげたり、というふうに、まさに縁の下の力持ち的なところに位置づけていかなければならないのではないかと思います。

 機械のスペックが速いとか凄いという話をしても、僕らは業界人なのでその意味がわかりますが、一般コンシューマーの人たちに新しい技術の話をしても不安になってくるばかりなので、そうなってくるとテクノロジーの位置づけも変わってきます。

 それともう一つ、私はやはり組織では人が重要だと思うんですね。インテルは人に投資をしていかなければいけないと考えています。人材をきちんと要所に位置づけなければいけませんから、そこに教育が必要です。テクノロジーを使うのも人だし、それをプロモーションするのも人ですから、そこを間違えてしまうと、大変なことになります。今でさえ、ある人に言わせれば「今や現実はSFを超えた」と言っているくらいですから、3年後、5年後どうなるかということですね。

 やはりそういうふうに、人に対しての新たなテクノロジーとどうやって向き合うのか、どういうふうに位置づけていくのか、ということを考えなければならない。もう一度これからグローバルな視点で、先のことを読んで言葉だけではなく将来を語り、それを安全や安心という方向性に位置づける必要があるでしょう。安全・安心をテクノロジーが支えるホッとするような方向性というのは、とくに震災のあとですから日本ではピンとくると思うんです。

 他の国々はまだ「追いつけ追い越せ」でやっていますから、何でもありのすごい勢いで進めていって、GDPの増大は目覚ましい。しかし、GDPだってずっと右肩上がりに成長し続けるわけではないですから、どこかの時点で何かが起こります。何かが起こったときに対処しなければならなくなるのでは遅いんです。日本はすでに様々なことを経験していますので、その経験値はとても大きな価値を持っているのではないかと僕は思います。

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