米国発の「市場主義経済学」では、いまの危機は解決できない!
『経済学の犯罪』著者・佐伯啓思インタビュー

── では日本の強みとはいったい何だとお考えですか?

佐伯 日本型経営などで言われていたことですが、やはり人間同士の信頼関係、組織力でしょう。

 そういう意味では、成果的な基準に合わないような金銭で評価できないこともいっぱいあります。しかしある種のいい加減さがあってこそ、全体としてうまくいっていたということもある。もちろん従来はムダが多すぎたといったような問題はありますが、ムダの良さもこれから改めて見直していく必要があると思います。

今後の日本社会の道とは

── 本の最終章でも触れられていますが、長期停滞の続く日本経済、これからの何か打開策のようなものはあるのでしょうか?

佐伯 いまわれわれが考えるべき一番大事なことは、経済的な次元の問題で効率をどうするかとか成長をどうするかという問題ではなく、どんな社会をつくっていくかをまず考えることです。

 そして私自身は、これからの日本は、どちらかというと効率性を追求する社会ではなく、公平性、快適性を追求する社会、海外にマーケットを求めるより、国内で循環する社会を構想すべきだと考えています。そして、しかもこれは結果として、そこそこ経済成長もする社会ではないかと思っています。

── グローバルな市場でプレイヤーとして積極的に闘うという道ではないという考え方ですね。

佐伯 もちろん個々の企業としてそんな道があってもいいでしょう。でもいまのグローバリゼーションが進む世界のたいへんさは、あまりに成長レベルの違うプレイヤーたちがみんな同じ土俵に立っているということです。まだ人口も増えて、人々の欲望がどんどん増大するインドや中国のような国と、日本のように人口は減っていく成熟した国とでは、社会設計が違っていて当然です。日本の場合、国の戦略として外の市場に向けてというのは、私たちのこれからの生活を考えても良いとは思えない。

── そう考えていくと、まだまだすべきこともいっぱいあるということですか?

佐伯 結局新しい社会をつくるということは、モノではなくシステムをつくるということでもあります。教育、医療、介護、労働、交通、住宅環境、文化をもった都市や生活圏をどうするかです。これらは決してグローバルな商品ではありません。

 それは効率性を高め、経済成長を生むという話とは違ってきます。公共投資もしなければいけない。システムをつくることは時間もかかり、正直ムダも多いでしょう。むしろ将来のため、10年後20年後を見据えた意味のあるムダをつくっていくことができるかどうか。