"ソーシャル・マーケティング"に関する見聞をさらに広めるため、「現代ビジネス」に様々なゲストをお招きし、対談や鼎談やレポートをお届けして行こう! ということになりました。
私がここでいう"ソーシャル・マーケティング"とは、世の中にあまたある企業の中で、その会社やその事業の存在意義を問うことだと思っています。他社には真似できない事業を展開し、世の中にどう役立つのか、そういう筋道が通った企業の物語を描くことだと思っています。
例えば、マイケル・ポーター米ハーバード大教授が提唱するCSV (Creating Shared Value)やフィリップ・コトラーのマーケティング3.0など、社会課題の解決と企業の利益や競争力強化を両立させよう(むしろ、これからの時代にはそれが企業の競争力につながる)という議論や論調に触れる機会も増えてきました。
"どんぐりの背比べ"的な競争力では、成長はおろか生き残りもままならない時代になってきたからでしょう。唯一無二の存在、それは提供するモノやサービスの差別化に止まらず、世の中との向き合い方を企業は問われています。
さて、今回はライフネット生命の出口社長にお話をうかがいました。出口社長からすれば、「企業が社会に貢献するのは当たり前の話。わざわざ"ソーシャル企業""社会的企業"なんて」と一笑に付されました。期待通り、出口社長のお話は、目から鱗の連続でした。
山田: 今日は個人的にもいろいろ勉強させていただきたいことがたくさんありますので、よろしくお願いいたします。
出口: ご期待に添えるかどうかはわかりませんが、何でもお聞きください(笑)。
山田: まず自己紹介をさせていただきますと、私は山田まさると申します。ちょうど出口さんのライフネット生命と時を同じくして、藤田康人という人間と2人で2007年にインテグレートというマーケティングエージェンシーを作りました。端的に言いますと、いわゆる従来の広告代理店さんのモデルではなく、ライフネットでも活用されているPRという手法でずっと仕事をしてきたものですから、広告というよりはPR発想でマーケティング全体をお手伝いしております。
ただ、世の中にはPRを専門にやる会社があって、私もずっとそういうところで育ってきたんですが、2007年に藤田と作った会社では、PR発想だけれども統合型で、全体をワンストップでサービスしたいということでやってきております。
私も出口社長の本を読ませていただいて、業界はまったく違うんですが、やはり今までになかったものを作ろうということでチャレンジされている姿というところで、ちょうど創業時期も似通っているものですから、今日は非常に楽しみにしていました。
私の本業はマーケティングで、いろいろな企業の取り組みについて年間150~200件くらいの案件を日々お手伝いしているんです。その中で私個人の問題意識として、これから日本という国のマーケティングはどちらの方向に向かっていくのかということがあります。ですので今日出口社長におうかがいしたい一つのポイントとして、前半はソーシャルマーケティングについてお聞かせいただきたいと思っています。
つまり市場競争のなかで競合他社との関係だけを見て競争優勢で競い合ってきて、全体が右肩上がりの時代には勝った負けたはあっても両方伸びていました。ところが今はゼロサムになってきている。それどころかマイナスサムの状況ですので、そういうなかでこれからマーケティングを考えるとどういうことになるんだろうな、と。
「余所の他社よりも少しスペックがこれだけ速くなった」とか「これだけ色のバリエーションが増えた」とか、そういう差別化のポイントは与えられて、これをどうやって伝えていくんだ、ということで一生懸命やってきた時代もありました。
しかし、もうどうやらそういうことではないのかなと感じています。競合他社との差別化という目線よりは、まずお客さんとどういうふうにつながっていくかということと、その先にある世の中との関係でどうつながっていくのかということのほうが、これからもっともっと大事になってくるんじゃないか。その辺りについて、出口社長が普段ご本で書かれていたりお話をされているようなことに基づきながら、お話を聞いていきたいと思っています。
出口:よろしくお願いします。