文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
今季最後のメジャー、全米プロ選手権はローリー・マキロイの圧勝で幕を閉じた。
英国人による大会制覇は82年ぶり、北アイルランドの選手としては史上初。
2位に8打差の勝利は1980年にジャック・ニクラスが打ち立てた7打差勝利を1打更新して大会記録を塗り替えた。
さらに、23歳3カ月の大会制覇は史上4番目の若さ。1958年に大会形式がストロークプレーに変更されて以降では最年少優勝となった。
記録づくめの圧勝ぶりは、マキロイがメジャー初優勝を挙げた昨年の全米オープンの再現フィルムのようだった。
ウイニングパットを沈め、ガッツポーズを取り、そして父親ゲリーと抱き合い、涙。
「こんなことが起こるなんて・・・」
世の中、いや、ゴルフにおいては、本当に何が起こるかわからない。
それにしても、大どんでん返しの逆転劇が起こった先の3つのメジャーでマキロイは下位に低迷し、全米オープンは予選落ちを喫した。3月に米ツアーのホンダクラシックで今季1勝を挙げてはいたが、4月のマスターズ以後は振るわず、「マキロイはスランプだ」と世界のメディアは書き立てていた。
だが、前週のWGC-ブリヂストン招待では5位になり、今週はメジャー2勝目を独走体制で制した。
マキロイの不調の波を絶好調に変えたものは何だったのか。
彼は焦っていた。必死になりすぎていた。ムキになりすぎていた。
「テクニックにこだわりすぎていた。練習場で球を打ち過ぎていた。それに気付いてからは、練習場ではなくコースで多く球を打つように変え、ゴルフを楽しみ、メンタル面を調整した」
技にこだわりすぎた姿勢を変え、技と心のバランス調整に努めた。それが、マキロイの不調の波を好転させた。
今週の月曜日にキアワ・リゾートにやってきたマキロイは、ロッカールームに行ったときも、こんな具合だった。
「僕のロッカーは窓辺にあった。その窓からは練習グリーンと海が一望できて、そのとき、なんとなく、いい感じを覚えた。で、父とキャディに言ったんだ。『何か、いい予感がするよ』ってね。それがこういう結末になるなんて、面白いね」
ゴルフはメンタルなゲーム。平穏な心、満たされた心が、ゴルフにハッピーエンドをもたらした。