上場を果たし、10億ユーザーの突破も間近に迫ったFacebook。隆盛を極めている一方で、その地盤は必ずしも安定的とはいえません。今回の記事では、Facebookが抱えるリスク要因、ネガティブ要因についてまとめます。
1.モバイル対応の遅れ
CEOのマーク・ザッカーバーグ自身も「モバイル対応はFacebook最大の課題」と語っている(参考)通り、急速に広がるスマートフォンへの対応への遅れは、Facebookの主要なリスクファクターです。
Facebookが運営を始めたのは2004年。その頃、スマートフォンは世の中に出回っていませんでした。FacebookはあくまでPCからアクセスするものとして設計され、進化してきました。言い換えれば、Facebookはここ最近普及した「スマホ」には、必然的に対応が遅れてしまうわけです。
現に日本でも、スマホをメインターゲットにしたメッセージングサービス「LINE」が、Facebookを抜いて活発に利用されています。
LINEは国内では既に2300万人が登録しており、アクティブユーザー数はその7割程度(参考)の1600万人前後と想定されます。Facebookの国内アクティブユーザー数は1000万人程度(参考)なので、既にLINEは大きくFacebookに水を空けてリードしている状態です。
モバイル対応を強化すべく、今年に入り、Facebookはモバイル関連企業を続々と買収しています。10億ドルで買収された写真共有SNSの「Instagram」に始まり、顔認識技術の「Face.com」、位置情報を使ったモバイルSNSの「Glancee」、その他モバイルアプリを開発する「Spool」「Lightbox」「Karma」「Acrylic」といった数々の企業が、Facebookによって買収されていきました。
PCは使わず、モバイル端末からのみアクセスするユーザーも急増しており(今年3月時点で8300万人、6月時点で1.02億人)、Facebookは「モバイル」の収益化とユーザー体験の向上に、ますます力を入れる必要に迫られています。
2.偽のアカウントが8300万人分も!
Facebookの誇る約10億人のアクティブユーザーのうち、8.7%、数にして約8300万人分のアカウントが「偽」であることを、Facebook自身が明らかにしました。
内訳は、4.8%が、規約で禁止されている1人が2つ以上のアカウントを持つ「重複アカウント(duplicate)」、2.4%が、ペットの名前や会社の名前で個人アカウントを取ってしまっている「勘違いアカウント(user-misclassified accounts)」、1.5%が、スパムやBOTなどの明確な規約違反となっています。
3.低迷する株価
Facebookの「偽アカウント」発表を受けて、株価は大きく下落し、一時は20ドルを下回る最安値を付けました。5月18日のIPO(新規株式公開)の時点では、株価は38ドルだったので、わずか2ヵ月半で半値になってしまったことになります。現在はやや持ち直していますが、株価は依然下降・停滞トレンドにあります。
4.相次ぐ幹部の流出
上場したばかりの企業にはありがちなことですが、Facebookでも幹部スタッフの流出が続いています。6月にはFacebookのCTO(最高技術責任者)のBret Taylor、8月にはKatie Mitic(director of platform marketing)、Ethan Beard(director of platform partnership)が退職を発表しています。
5.消費者からの低い評価
7月19日に発表された最新の「American Customer Satisfaction Index(米国顧客満足度インデックス)」で、Facebookは数あるSNSの中で、もっとも低い顧客満足度を記録しました。
調査では、SNSの1位が「Google+(78%)」、2位「Pinterest(69%)」、3位「Twitter(64%)」、4位「Linkedin(63%)」、5位「Facebook(61%)」という結果になりました。61%という満足度は、調査対象になった230の米国企業の中でも、ワースト5に入る数字です。プライバシーへの配慮の低さ、広告の多さなどが悪評につながったと考えられます。
6.米国では成長が頭打ち
調査会社ComScoreが分析したデータによると、米国でのFacebook利用者数(ユニークビジター)は頭打ちとなっています。昨年の11月をピークに微減が続き、半年で4.8%のユーザー数の減少が見られたそうです(参考)。調査会社ニールセンの分析でも、2.2%のユニークビジターの減少が見られているので、米国では、実質的に成長が頭打ちとなっていると考えてよいでしょう。
Facebookの今後は、彼らが「ブラウザを超えた体験」を提供できるかどうかにかかっていると私は考えます。
分かりやすい例でいえば、それは「Facebookフォン」でしょう。iPhoneのような、優れたスマートフォンをFacebookが開発することができれば、さらなるユーザー数の増加や、利用度の向上が期待できるでしょう。
将来的には「Facebookテレビ」や「Facebookカー(車)」なども、Facebookの主要なサービスの一つになっていくでしょう。テレビに関しては、既に日本でも、日本テレビがFacebookの技術協力のもと「JoiNTV」を開発しています。車の分野でも、メルセデスがFacebookと連携し、車へのサービス統合を実験しています。
その一歩先には、Googleが開発しているメガネ型のガジェットのような「Facebookグラス」なども控えているかもしれません(メガネをかけるだけで目の前にいる人との共通点が分かる、など)。
スマートフォン、テレビ、車、次世代メガネ・・・そうしたデバイスを考慮すれば、まだまだFacebookには成長の余地が残されていると言えます。「ブラウザを超える」ことは、Facebookにとって重要な課題となっていくでしょう。
(本記事に対するご意見、ご感想は筆者のフェイスブックページ、またはメール nubonba[at]gmail.com までお願いいたします。ブログも書いておりますので、よろしければご購読ください)