[野球]
上田哲之「ダルビッシュ時代の投手たち」

スポーツコミュニケーションズ

ダルビッシュに欲しい中矢の落ち着き

 当のダルビッシュは、後半戦に入って、11勝目はあげたものの、不安定な内容を見せている。8月1日のエンゼルス戦は、5回7失点。3回の6失点が痛い。「周りからもずっと四球のことを言われて、(中略)気にしすぎてしまった。次からは(中略)全く四球を気にせずに気持ちを出していこうと思う」とコメントしている。基本的には四球を嫌い、球数を少なくし、100球で交代する。これがアメリカ野球である。彼も順応せざるをえない。

 しかし、それが必ずしも自分本来の投球ではない。こうも言っている。「体の使い方とか、別の投手にならければいけないかなと思う」(いずれも「スポーツニッポン」8月3日付)。むしろ、彼は「世界一」になるために、自ら望んでこういう試行錯誤の道をえらんだのだ。それはいわば投手の歴史の先頭に立って、歴史を切り開こうともがく姿といってもいい。

 おそらく、彼には大投手に上り詰める素晴らしい未来が待ち受けている。打者を見る目にも、その自信を見てとることができる。ただ、あえてひと言だけ付け加えれば、あの中矢力の目にあった奥深い落ち着きが、そこにはまだ宿っていないような気がする。

上田哲之(うえだてつゆき)1955年、広島に生まれる。5歳のとき、広島市民球場で見た興津立雄のバッティングフォームに感動して以来の野球ファン。石神井ベースボールクラブ会長兼投手。現在は書籍編集者。