[野球]
上田哲之「ダルビッシュ時代の投手たち」

スポーツコミュニケーションズ

“世界一の投手”に向けての挑戦

 話はベースボールに移る。メジャーリーグで世界と戦う日本人選手たちにも、さまざまな転機が訪れているようだ。松井秀喜はレイズから戦力外通告を受け、自由契約になることを自ら選択した。イチローはヤンキースに移籍した。下位を打つ可能性も受け入れる契約だという。今季、最も注目を集めたダルビッシュ有(レンジャーズ)はどうか。既に11勝(3日現在)を挙げているのだから、当然、成功というべきだろう。

 開幕当初は、マウンドやボールに不慣れな面があったのだろう、突然、コントロールを乱すシーンが目立った。それは試合を追うごとに、克服しようとしてきたように見える。なによりも、奪三振の多さが目立つ。評価すべき点であろう。ただ、あえて言えば、ヒットを打たれることにも、少し慣れたのではあるまいか。開幕当初は、当然、日本時代の記憶があるから、いわば完封して当たり前みたいな感覚だった。メジャーでは、さすがにそうはいかない。

 プリンス・フィルダー(タイガース)に打たれて、「まだ学ぶべきことがある」という主旨のコメントをしたのが、象徴的だ。現状でも、フィルダーを抑え込むだけの力は十分にもっていると、私は確信しているが。このあたりに、抑えて当然だったものが、感覚的に、打たれることに慣れたという側面がほの見える。もっとも、そういう経験も含めて、彼の目指す「世界一の投手」への過程、ということなのだろう。

 その意味で、オールスター直前のインタビューも印象的だ。日本の選手は、日本球界の常識にとらわれず、もっと新しいトレーニングなどに取り組むべきだ、と力説したのである。旧来のカラにこもっていないで、やってみないことには、わからないではないか。それでミスしたら、やり直せばよい。彼が意識しているかどうかは知らないが、この言葉には、自分が日本野球の歴史を変える、という意思がこめられている。