[陸上]
鈴木雄介(富士通)<後編>「メダルを目指し、一歩ずつ」

スポーツコミュニケーションズ

キーワードは“心拍数”

練習中、今村<左>から栄養補助食を受け取る

 復帰レースに向けて費やすことができた練習期間は約1カ月半と短かった。その中では、30キロなど長距離を歩くことで失われた体力を戻すメニューを主にこなした。迎えた東日本実業団陸上は、実に7カ月ぶりの実戦となった。調子を取り戻し切れていない鈴木にとっては「なかなかキツイレース」だったという。だが、結果は20分7秒41というまずまずのタイムで2位だった。
「調整が遅れているのは重々承知していました。その意味では、上出来という感覚のレースでもありましたね」

 目安の1キロ4分ペースに限りなく近い記録に、鈴木の声は明るかった。

 また、復帰戦ではロンドンに向けての明確な課題を見つけることができた。「心拍数の高さ」である。普段なら190に満たない程度の心拍数が同レースでは200前後だったのだ。前半から速いペースを保ちたい鈴木にとって、心拍数は低ければ低いほどいい。後半の疲労や足への乳酸蓄積が小さくなり、レース終盤でも粘れるからだ。心拍数の抑制には、長い距離を踏む練習とスピード強化を重視した負荷強度の高い練習もこなさなければならない。それでも本番までに今の高い心拍数が下がらなければ、前半は中盤の集団でレースを進めていき、後半にスパートをかける展開にもっていくつもりだ。

 今村は、鈴木が五輪本番では自己ベスト(1時間20分6秒)を更新できるようにトレーニングのプランを計画している。ピークを合わせ、自己ベストを出せれば、テグ同様に入賞ラインに十分届くとの判断だ。しかし、「目標を決めるのはあくまで本人です。選手がメダルを目指すのなら、私は特にケガが再発しないようにケアし、目標達成に近づけるようサポートしていきます」とも語る。

 では、本人の気持ちはどうなのか。
「五輪ではメダルを目指したい。そのためには持久力アップはもちろん、さらにスピードアップするための練習にも取り組まなければいけないと考えています」
ケガでアドバンテージを失った鈴木だが、「一番の持ち味」という気持ちの強さは、少しも弱まってはいない。

 五輪のレース当日(8月4日)まで、残り11日。6月17日に参加したイタリアの国際大会では3位に入賞するなど、鈴木は本番に向けて調子を上げている。今できることに懸け、ロンドンで表彰台へ――。一歩、一歩、鈴木は歩み続ける。

(おわり)

<鈴木雄介(すずき・ゆうすけ)プロフィール>
1988年1月2日、石川県生まれ。辰口中、小松高、順大を経て、現在は富士通に所属。専門は「20キロ競歩」。中学1年時に競歩に出合い、翌年から本格転向。めきめきと頭角を表し、高校時代にはインターハイ優勝。さらには世界ジュニア陸上出場も果たす。順大入学年の06年には、世界ジュニア「1万メートル競歩」で銅メダル。世界陸上には09年のベルリン大会、11年韓国・テグ大会に出場。このテグ大会で8位入賞を果たし、同種目のロンドン五輪代表に内定。レース前半からペースを上げる積極的な歩きが武器。身長169センチ、体重57キロ。

(鈴木友多)

※この原稿は2012年6月に執筆したものに、加筆・修正した記事です。