[虎四ミーティング]
山本博(アーチェリー)<前編>「調子の良し悪しで的の大きさが違う!?」

スポーツコミュニケーションズ

言葉一つで崩れるバランス

二宮: 本番に心身ともにピークを合わせるのは至難の業ですね。
山本: はい。私はもう 30年近く、自分自身の行動パターンをノートに記しているんです。そこから何かの法則を見出して、大会当日にピークがくるように試みているのですが、やはりピンポイントで合わせるのはなかなか難しいですね。

二宮: 一番、苦労するのはどういうところですか?
山本: たとえ自分自身の行動パターンとして「こういうふうにすれば、いい精神状態で本番に臨むことができる」ということがわかったとしても、試合当日に思わぬ出来事が起きることもあるわけです。試合会場に予想していなかった人が駆けつけてくれて、その人がかけてくれた言葉が妙に気になったり……。もちろん、その人に悪気はないのだけれども、何気ない一言がツボにハマってしまうこともあるんです。例えば「今ちょっと練習を見ていたら、引手の薬指のかたちが以前と変わったような気がしたけれど、新しい試み?」なんて何気なく言われたりすると、どうしても薬指への意識が強くなってしまう。それによって全体のバランスが崩れてしまったり……。特にうまくいかなかった 90年代というのは、そういう試合前のひと言に敏感になりすぎてしまっていましたね。

二宮: よく野球のバッターが「調子がいい時にはボールが大きく見える」と言いますが、アーチェリーでもメンタルによって、的の見え方が変わることはありますか?
山本: はい、変わりますね。特に照準器に狂いが生じます。僕らは矢を引いて、的を狙う時、静止しているように見えると思いますが、実は引手の方の筋肉を伸ばしながら、矢を発射させているんです。ですから、引手を伸ばしているということは、的に矢を合わせる照準器も動いているわけです。しかし、調子がいい時には伸びながらも照準器が全くずれないんです。そこで精神的余裕ができて、的が大きく感じるんでしょうね。ただ、調子が悪い時の的は、大きく感じる時と比較にならないほど、とても小さく感じるんですよ。「何で、こんなに遠いんだ?」って思ってしまうほど、距離があるように感じるんですね。