[虎四ミーティング]
山本博(アーチェリー)<前編>「調子の良し悪しで的の大きさが違う!?」

スポーツコミュニケーションズ

成績に表れていた心の変化

二宮: アーチェリーというと、メンタル勝負というイメージがありますが、山本さんは集中力を持続させるためのトレーニングをしているのですか?
山本: 若い時、それこそロサンゼルス五輪( 1984年)で銅メダルを獲得した頃の 80年代は、ポジティブ過ぎてしまって、「自分にはメンタルトレーニングは必要ない」と思っていました。

二宮: それほど勢いに乗っていたんでしょうね。
山本: 学問に頼るなんていうのは、うまくいっていない証拠だと。ですから、自分はうまくいっているのだから、やる必要はないと思っていたんですね。ところが、 90年代に入ると、なかなか思うようにいかなくなってきたんです。五輪や世界選手権に出場しても、いい成績が挙げられない。それじゃ、メンタルトレーニングを勉強してみようか、と思って、母校の日体大でスポーツ心理学専門の先生のところに通った時期がありました。

二宮: 成果はありましたか?
山本: いえ、僕には合いませんでした。というのも、先生から教わることはほとんど、既に自分が考え付いていたことばかりだったんです。先生からも「オマエ、こんなことは、もう思いついていただろう?」なんて言われていましたから。つまり、自分自身がやってきたことの確認作業にしかならなかったんです。

二宮: 要するにあまり役に立たなかったと?
山本: ただ、その確認作業をした結果、わかったこともありました。 90年代、思うようにいかなくなったのは、僕自身のアーチェリーへの興味が薄らいだからだったんです。

二宮: そこで原点に戻ることができたと?
山本 はい。 80年代はアーチェリーが面白くて仕方なかったんです。試合に出場すれば、新しい対戦相手と新たな勝負ができましたからね。ところが、五輪や世界選手権で何度も対戦するうちに、どの大会で出会う相手も同じ顔ぶれになってきていたんですね。そうすると、相手がどうというよりは、自分自身のコンディションでメダルのあるなしが決まってきた。それが 90年代でした。

二宮: 試合が始まる前に、おおよその結果がわかるとは驚きです。
山本: わかるんですね。初日で「あぁ、もう今回のこの感じは、そうそうオレにはメダルは巡ってこないな」と。もちろん、そこからどうにかして気持ちを切り替えてやろうとするのですが、これがなかなか難しいんです。