二宮寿朗「五輪落選の大迫に期待すること」

二宮 寿朗

“先輩”興梠のように急成長を

 大迫が鹿島で2トップを組む“先輩”興梠慎三も北京五輪メンバーに選ばれなかった1人だ。当時、メンバー発表の直後に彼を取材したが、そのときの落胆ぶりは今でも筆者の脳裏に焼きついている。森本貴幸(カターニア)の台頭によって興梠は当落線上にあり「入らないとは思っていましたから」と言いながらも「絶対にこの悔しさをバネにしてA代表を目指したい」と語気を強めたことを覚えている。

 落選を機に目の色を変えた興梠は鹿島でレギュラーの座を奪取。そして北京五輪から2カ月後の10月に初めてA代表に選出され、UAE戦で念願のA代表デビューを果たした。世界の大舞台を踏んできた仲間たちに負けず、チームで意識を高く持ってトレーニングに励んだ成果であった。

 代表で結果を残せずに南アフリカW杯本大会メンバーには選ばれなかったものの、鹿島ではエースとして定着。今季は現在7ゴールを挙げて得点ランキングの上位に名を連ねており、代表復帰を虎視眈々と狙っている。

 同じく鹿島の増田誓志も北京のメンバーに選ばれなかったが、その後の活躍によってザックジャパンに招集されている。大迫も先輩たちの背中を眺めれば、やるべきことが見えてくるはずである。

 U-23代表の主軸となってからの大迫の成長は目を見張るものがあった。慣れない1トップで当初はハマっていない感もあったが、次第にその印象は変わっていった。仕掛けの意識を強めるようになってからは持ち味の「柔」ばかりでなく「剛」の部分も出てきた。アルベルト・ザッケローニ監督に呼ばれて代表候補合宿にも参加しており、A代表も手の届くところまで来ている。

 大迫勇也、22歳――。同じ鹿児島の先輩、遠藤保仁(G大阪)もシドニー五輪ではバックアップメンバーで本番の舞台に立てなかったが、その後の活躍は今さら説明する必要もないだろう。ロンドン経由ブラジル行きの道のりも、経由地がなくなっただけの話。目的地がブラジルであることに変わりはないのだ。気持ちを切り替えて、目線をブラジルに向ければいい。落選は悲劇にあらず。反撃の号砲とすればいいだけのことだ。