スペシャルレポート プロ野球 寮長たちは見た!
「一流と二流、これが分かれ目」

週刊現代 プロフィール

 だから食事制限でも結構自分を追い込んだんだと思う。食べる量を抑えてのダイエットは、どうしても骨の強度を弱めてしまうんです。もちろん努力が招いた悲劇ですが、要は、間違った努力をやっていたということ。プロとしては褒めることはできません」(田中氏)

野球をやめる準備

 山田は、普段から感情を爆発させるようなタイプではない。だが、「育成を脱したい」という焦りや闘争心が、ケガにつながってしまった。

 田中氏が続ける。

「ただそれ以降、彼は大きな失敗をしていない。骨折から回復後、一昨年に支配下登録されてからの山田は順調すぎるほどですよ」

 若気の至りによる骨折。投げられない期間、遠回りした経験が、山田の成長を早めたことは間違いない。

 野球だけに没頭してきた男たちがプロに入り、さらに野球に没頭する中で、社会人としての成長も求められる。その過程で、寮が果たす役割は計り知れない。

 前出の樋沢氏は、

「寮の生活というのは、ある種、野球をやめる準備でもあるんです」

 という。それは、

「野球を離れることになっても困らない程度の、常識を学ぶ場でもあるから」

 と続ける。

 寮長を務めていた頃、樋沢氏はよく育成契約の選手たちにこんな話をした。

「支配下(登録)の選手と同じ生活をしてどうする! 年俸が違うのに同じもの食べて、ブランド物を買って。立場が違うことを忘れたら一生追いつけないぞ!」

 寮の中では、ドラフト1位の黄金ルーキーも育成ドラフト5位の選手も、同じ寮費・食費で、同じ生活を送ることができる。

 その環境の中で「這い上がる」という意識を忘れた瞬間に厳しい現実が口を開けて待っている。

 古田敦也、宮本慎也(41歳)、稲葉篤紀(39歳)。近年だけで3人もの2000本ヒッターを育てたヤクルトの戸田寮には、他の寮とはやや異質な緊張感が漂っている。

 先月の30日、腰痛を克服し、一軍に復帰した川端慎吾(24歳)の活躍を映すテレビ画面を、同じ遊撃手の2年目・山田哲人(19歳)は複雑な目で見つめていた。

「誰かが活躍すれば、誰かが押しのけられる」