撮影:立木義浩
第1回はこちらをご覧ください。
シマジ そもそも文化服装学院に行ったきっかけは何だったの?
ドン 芝浦工大にいくつもりで受験したんだけど、カンニングが見つかって落ちちゃった。忘れもしないよ、英語の単語で「figure」っていうのが出てきたから、隣のヤツに小さな声で「フィギャーって何だ?」って訊いたんだ。そいつが「スケート」って言うから、「アイススケートのことか?」と尋ね返すと、「アイスクリームじゃない」って囁く。おたがい小声で話してるからよく聞き取れなかったんだ。
まるでトンチ問答のようなことを繰り返しているうちに、カンニングがバレて芝浦工大は見事に落ちたんだ。アイツも当然落ちただろうね。いま何やってるんだろう。
シマジ ドンさんにとって英語の「figure」は運命的な言葉たったんですね。図案という意味もあるのにね。
ドン それで1年間別の大学に行ったんだけれども、全然おもしろくない。で、もともと実家で母は呉服店をやり父は医者をやっていたので、医者は無理でも服が好きだったからデザイナーにはなれるだろう、と軽く考えて文化服装に入ったわけ。
これまた面接のときは大変だったよ。パンツはスパンコールがいっぱいついたジーンズで、ジャケットはヒョウ柄だったんだ。後ろのヤツに「ちょっと上着貸してくれ」って借りて、ロングヘアを服の後ろに隠して受けたの。面接が終わって服を返すとき、「おまえはヒョウ柄で行け」と言ったら、ソイツ「勘弁してください」って言ってたっけな。おれは大学に1年行ってたから、みんな年下だったんだよ。