6月5日、グーグルは同社の電子メール・サービス「Gmail」でハッキング(不正侵入)の警告を発した。その正体を「国家に支援された攻撃者」と指摘し、正確な名称を同社は避けたが、日米の業界誌は一斉に「中国政府のハッカーが攻撃している」ことを暗示する記事を掲載している。一方、米国の公共放送では、中東で猛威を振るうウィルスのスパイ活動を大きく報道している。インターネットを舞台とした「闇の戦い」は、ますますエスカレートしている。
グーグル社のセキュリティーエンジニアリング担当副社長エリック・グロッシー(Eric Grosse)氏は、6月5日付の公式ブログで「Warning:We believe state-sponsored attackers may be attempting to compromise your account or computer.」という警告について解説した。「国家が支援するハッカーが貴方を襲う恐れがあります」と言う警告がメール画面に表示されたら、暗証番号の変更などの防御措置を講じるべきだと述べている。
米国の通信業界では、グーグルが過去、中国政府が関与していると思われるアタックを受けていることが知られている。昨年、私自身も警告のメールをグーグルから受け取り慌ててパスワードの変更を行った。「僕のような外人ジャーナリストまで標的になるのか」と背筋が冷たくなったことを思い出す。
「既に被害に遭ったユーザーの報告」を受けて、グーグルは今回大々的な警告表示に踏み切ったようだ。一方、中国政府は関与を否定する怒りの声明を発表している。
これまでグーグルのGmailはロシアやイラン系ハッカーによる攻撃もあったと言われており、従来からNSA(National Security Agency、国家安全保障局)と密接な連携を取っている。一部では「今回のアタックはNSAからグーグルに情報が入ったのではないか」という憶測も飛び交っている。