デジタル・ニュースの震源地、「D: All Things Digital」カンファレンス

「allthingsD」のHPより

 先週1週間の間に起きたデジタル・トレンドに関するニュースを振り返った時、とても気になったニュースは以下の2つでした。

Collected Videos of Late Apple Co-Founder Steve Jobs at D, Now Free on iTunes」(アップルの共同創業者、故スティーブ・ジョブズ氏の一連の無料動画をiTunesで公開へ) AllthignsD 2012年5月30日

 ジョブズ氏のプレゼンテーションやインタビューは既に新製品発表の際や有名なスタンフォード大学の卒業スピーチで目にしたことも多いと思いますが、2003年~2010年の間に「D: All Things Digital」というイベントに6回も登壇したジョブズ氏のインタビュー動画(各45分~90分程度)は、当時の時代背景や現代に通じるアイディアを窺い知る上で貴重なものです。特に2007年にビル・ゲイツ氏と並んで対談した様子を収録した動画はステージ上でお互いに尊敬し合う様子が映し出されていて、多くの学びを提供してくれるものでした。

メアリー・ミーカーの2012年展望-IT革命はまだ「春のキャンプ」、これから驚くべき変化が起きる」 テッククランチ・ジャパン 2012年5月31日

 メアリー・ミーカー(Mary Meeker)氏はかつてモルガン・スタンレーで約20年にわたってテクノロジー業界の敏腕アナリストとして名を馳せた人物ですが、2010年12月以降は、シリコンバレーのベンチャーキャピタルファーム、クライナー・パーキンス(Kleiner Perkins)のパートナーとして活躍しています。テクノロジー業界の今後の方向性を見極めるミーカー氏の分析力には以前から定評があり、次にどのようなトレンドやテクノロジーが来るのかを予測するプレゼンテーション、「Internet Trends」は多くの人からの注目を集めています。

 計100ページ以上にわたるプレゼンテーションには、今後ますます成長が予想されるモバイルの可能性、そして様々なインターネットサービスにより現在の全てのビジネスのあり方を考え直すことの必要性等が豊富な事例と共に力強く訴えられています。

「D: All Things Digital」とは?

 以上いずれのニュースもテクノロジー業界のトレンドの過去と未来を読み解く上でとても興味深いものですが、改めて気付いたのは、この2つのニュースのいずれもが「D: All Things Digital」と呼ばれるハイテク・メディア業界の会議にて発表されたものであることです。

 「D: All Things Digital」とは、2003年にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の著名ジャーナリストであるウォルト・モスバーグ(Walt Mossberg)氏とカーラ・スウィッシャー(Kara Swisher)氏により始められた、IT業界の会議です。

 毎年5月か6月の3日間、米国ロサンゼルス郊外で開催される会議では、準備されたスピーチやパワーポイントのスライドは基本的に禁止で、壇上でベテランジャーナリストのモスバーグ氏やスウィッシャーからの鋭い質問に答える形で進められ、IT業界の重要人物の人柄や本音を窺い知ることができるところに特徴があります。

 また、IT業界で広く信頼されているジャーナリストが始めた会議ということで、毎年豪華なスピーカーが登壇することでも知られています。

 今年10周年を迎える会議は「D10」と呼ばれ、オープニング・スピーカーのアップルCEOティム・クック氏を筆頭に、オラクルCEOラリー・エリソン氏、ピクサー・アニメーション・スタジオのエド・キャットムル社長、映画「ソーシャル・ネットワーク」の脚本家で、ジョブズ氏の伝記映画の脚本も手がけるアーロン・ソーキン氏、その他ジンガCEOマーク・ピンカス氏、リンクトイン会長リード・ホフマン氏等が参加しました。

 例年大人気のカンファレンスのため、高額な参加費にもかかわらず(4,995ドル)、業界に影響力を持つ人物が一堂に集まることから、定員500席もすぐに売り切れてしまうとのことです。

 「D: All Things Digital」の過去の名場面にはスティーブ・ジョブズ氏とビル・ゲイツ氏との歴史的な対談(2007年)や、フェイスブックCEOマーク・ザッカーバーグ氏が壇上で汗だくになりながらプライバシー問題についての質問を浴びせられる場面(2010年)等があります。今回10周年を記念して作成された動画には過去10年分の名場面がダイジェストで盛り込まれており、デジタル業界のこの10年を振り返ることができます。

 オンラインニュースサイトとしての「All Things Digital」は、カンファレンスの延長として2007年5月に始められたメディアですが、IT業界の経営者や読者から絶大なる信頼を得ているジャーナリストが始めたメディアということもあり、様々なスクープをモノにしています。私たちが日々目にするニュースの、最初の情報源として「All Things Digital」の名前を目にしたことがある方も多いのではないかと思います。

 トラフィックを稼ぐための派手な見出しをつけることもなく、現在13名の記者による選りすぐりの記事が配信されており、2011年12月時点で月間704万ページビュー(ユニーク・ユーザー数は月間205万人)と、多くの人々の情報源として読まれています。

 今回改めて「All Things Digital」の歴史を振り返ってみることで、デジタル業界でいかに信頼されているカンファレンスであり、メディアであるかを知ることが出来ました。今後見逃すことの出来ない情報源として注目してみたいと思います。

本記事に関するご意見、ご質問、フィードバック等は筆者のFacebookページ
までお願いいたします。ツイッターは@socialcompanyです。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら