[ボクシング]
杉浦大介「パッキャオは衰えている?」

スポーツコミュニケーションズ

波乱の予感も

「僕はまだまだハングリーだよ。ファンに良いファイトを見せて、がっかりさせないことが最優先事項。ブラッドリーは恐れずにパンチを放ってくるから、激しい打ち合いになるだろうね」

 パッキャオ本人はそう語り、リングへの気持ちがが萎えていないことを強調している。言葉通り、心身ともに完調に近いコンディションで臨んできたならば、パッキャオの有利は動かない。たとえスピードや切れ味に多少の衰えはあろうと、その戦闘力はいまだに世界最高級。フルラウンドに渡って鋭いステップインからの連打を放ち続ければ、ブラッドリーはさばき切れないだろう。

もしもパッキャオがブラッドリーに敗れるようなことがあれば、世界のリングは混沌状態に陥ることになる。Photo by Kotaro Ohashi

 ただ、この試合が決まった直後には、他ならぬローチ・トレーナーも「マニーは(知名度が高いと言えない)ブラッドリーのような相手でもやる気を保てるかどうか」と懸念していた。周囲が危惧する通り、もしもパッキャオの緊張の糸がもう途切れてしまっていたとしたら……。そのときには、意を決したブラッドリーの鋭いパンチの前にパッキャオがずるずると後退する意外なシーンが見られるかもしれない。

 9日のタイトル戦は、我らの時代を駆け抜けてきたリーディングボクサー、パッキャオの現在の能力とコンディションを測るリトマス紙的な一戦になる。世界中が注目するリングに現れるのは、いまだにフレッシュで野性的な怪物ボクサーか、あるいはリング外のさまざまな出来事によってかき乱された下降線のファイターか――。

 試合展開が読みづらいマッチアップではないが、結果は予定調和のものに終わるとは限らない。初夏のラスベガスで行なわれるビッグファイトからは、波乱の予感も少なからず漂ってくる。

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール>
1975年、東京都出身。大学卒業と同時に渡米し、フリーライターに。体当たりの取材と「優しくわかりやすい文章」がモットー。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシング等を題材に執筆活動中。
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