[障害者スポーツ]
伊藤数子「新たな日本のスポーツ史をつくるリーダー」

~車椅子ランナー・廣道純~
スポーツコミュニケーションズ

兼ね備えたリーダーの資質

 今年3月に東京・恵比寿で開催したパラリンピックイベント「Sports of Heart」にも、廣道さんは大分から駆けつけてくれました。「Sports of Heart」では日本の障害者スポーツの発祥の地である大分からも何らかのかたちで参加してもらおうと、実行委員会の一人である「MLBカフェ」のオーナーの兵頭慶爾さんが大分に足を運び、行政や企業に呼び掛けました。

 その際、兵頭さんは地元の人の勧めで廣道選手に会いました。そこで「Sports of Heart」のことを聞いた廣道選手はすぐに私に電話をしてきてこう言ってくれたのです。「オレにもぜひ何かやらせて! 何でもやるよ。もう飛行機のチケットも取ったし、とにかく行くから、オレを使い倒してくれ!」もうその勢いと熱さで、それまで持っていた大きなイベントに向けてのいろんな杞憂は一気に吹き飛びました。廣道選手からエネルギーをいただき、「絶対にこのイベントを成功させよう!」と、改めて誓ったのです。

 実は、恵比寿での「Sports of Heart」に参加してくれた大分の企業が、このイベントを開催することの意義を感じてくれたのでしょう、今年10月には大分で開催する計画が進められています。もちろん、廣道選手にも企画の段階から参画してもらっています。ロンドンパラリンピックが近づきつつある今、競技のことに専念したいというのが普通でしょう。しかし、廣道選手はしっかりと金メダルを狙いながら、こうした普及活動の手も休めないのです。

 おそらく廣道選手になぜそこまで一生懸命になるのか、と聞けば「自分がやりたいことをやりたいようにやっているだけ」と答えるでしょう。彼には無理をしたり、かっこつけたりしているところがありません。そして、彼の言動はいつも一本筋が通っているのです。だからこそ、廣道選手というランナーに魅力を感じ、支援してくれる企業や団体、そして仲間が彼の周りにはたくさんいるのでしょう。

 そんな彼から、次代のリーダーの匂いが、確かにしています。ランナーとしての数々の実績、自分がやると決めたら突き進むことのできる強引さ、そして何か をつくりあげる際に多くの人を巻き込む力……。廣道選手は自ら道を開拓し、皆を牽引してくれる、まさに障害者スポーツ界の新しい時代をつくるリーダー。そ の廣道選手がロンドンで金メダルに輝く姿が、私の脳裏にははっきりと浮かんでいます!

伊藤数子(いとう・かずこ)
新潟県出身。障害者スポーツをスポーツとして捉えるサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。1991年に車椅子陸上を観戦したことが きっかけとなり、障害者スポーツに携わるようになる。現在は国や地域、年齢、性別、障害、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するため の「ユニバーサルコミュニケーション活動」を行なっている。その一環として障害者スポーツ事業を展開。コミュニティサイト「アスリート・ビレッジ」やインターネットライブ中継「モバチュウ」を運営している。2010年3月より障害者スポーツサイト「挑戦者たち」を開設。障害者スポーツのスポーツとしての魅力を伝えることを目指している。11年8月からスタートした「The Road to LONDON」ではロンドンパラリンピックに挑戦するアスリートたちを追っている。
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