プロ野球「若き才能」はこうして見出された

特別読み物 中村(ヤクルト)、岩田(中日)、堂林(広島)、宮國(巨人)、川端(オリックス)ほか
週刊現代 プロフィール

「それでも、私がフォームについて一言指摘しただけでパッと修正してみせたんです。それは自分のフォームが体に染み付いている証拠。『こいつはこれで大丈夫だ』と確信しました」

 入団当時、「ハエが止まる」「マスターズリーグの方が速い」とまで揶揄された岩田は、3年をかけて「どこのエースにも見劣りしない、理想的なフォーム」(稲葉氏)を手に入れた。

「石の上にも三年とは、よく言ったものですよ」

 稲葉氏の頬がゆるむ。

 ウサギを負かした亀の道程のように、それが岩田にとっての最短距離だった。前出の森氏も続ける。

「私情を挟みたくなる投手だね。勝つと嬉しくなるもの」

限られたチャンス

 当初、岩田があくまで「川上の代役」だったのと同じく、ヤクルトの捕手・中村悠平(21歳)も、故障した正捕手・相川亮二(35歳)の控えでしかなかった。

 しかし、「控え」のレッテルを、中村は自らの力で引き剥がしてみせる。

 4月22日。巨人戦の6回表、ヤクルトのリードは1点。一死満塁の場面で、打席には長野久義。2球続けてストライクが入らない増渕竜義に、中村はなんと3球続けてシンカーを要求し、見事三振に打ち取る。

 元福井商監督・北野尚文氏は、テレビ中継を見ながら感嘆の声を上げた。

「捕手には第六感とも言える閃きが必要です。それは経験のなかでしか磨かれない。あの大胆なリードは、中村が今までの限られたチャンスを、いかに意味あるものに変えてきたかを証明してくれました」

 そしてこのシーンで、増渕が一度もサインに首を振らなかったことで、チーム内で中村が捕手として確かに認められていることを示した。

 先発の一角を務める同い年の赤川克紀(21歳)は、

「こっちが投げたい球のサインが出るから、一度も首を振ったことがない」

 と話す。

「研究熱心でコミュニケーション能力が高い」

 と北野氏が語る通り、中村は日頃から投手たちとの関係を積極的に作り上げてきた。ただし、それは決して馴れ合いではない。