Facebook上場後の行方 ~ビッグ・データの背後にある2種類の技術からの予想

 5月21日、米NASDAQ市場にIPO(上場)を果たしたFacebookだが、大方の期待を裏切り、上場直後から株価は冴えない値動きを続けている。その直前まで同社に寄せられた過度な期待の大部分は、彼らが保有する膨大な個人情報に依拠する。

 Facebookのようなソーシャル・メディアに蓄えられた大量の個人情報(データ)は、最近、IT業界のバズワード(流行語)となっている「ビッグ・データ(Big Data)」の重要な一部を為している。ビッグ・データの厳密な定義は存在しないが、印象としては現代社会に存在する、ほぼ全てのデータを網羅している感がある。

 たとえば「企業が保有する大量の顧客情報や売上げデータ」、「政府機関や公共団体が保有する各種の統計情報やデータベース」、最近では「ブログやSNS、Twitterなどソーシャル・メディアに投稿される無数のコメントや写真」、さらに「各種センサーを搭載した様々な機器や装置から、時々刻々と上がってくる計測データ」など。要するに、これら諸々のデータを全てひっくるめて「ビッグ・データ」と呼んでいる。

 そこではデータの分析(解析)が重要な意味を持つ。つまり大量のデータ自体に価値があるというより、それをいかに上手く解析して、企業や社会にとっての新たな価値を創出するか。ここがビッグ・データの主眼となっている。

 しかし、そういう事なら企業は昔からやっているのではないか---そんな感想を持たれる読者も多いと思う。たとえば「データ・マイニング」など、大量のデータを解析することで新たな収益機会を生み出す試みは以前から存在する。それと今回の「ビッグ・データ」とでは、何が違うというのだろうか?

社会現象としてのデータ信奉

 一つの答えとして、ビッグ・データの場合、たとえば「検索キーワードの地域的分布を解析することにより、伝染病の流行しそうな地域を予知する」、あるいは「政治的な動向や文化のトレンドを読む」など、多方面への応用が期待されている。この辺りが恐らく、これまでとは異なる点である。つまり単なるビジネスの領域を越えて、社会、政治、文化など多方面に渡ってデータ主導の科学的なアプローチを適用すること。これが最近の「ビッグ・データ」ブームのポイントだ。

 以前との、もう一つの違いは、分析の対象となるデータの質的な拡大である。いわゆる「ビッグ・データ」は2種類に大別される。それは「構造化データ(structured data)」と「非構造化データ(unstructured data)」と呼ばれるものだ。このうち前者は、たとえば企業の情報システムに格納された「関係データベース(RDB)」など、体系的に組織化されたデータを指している。一方、後者はたとえばブログやSNSなどソーシャル・メディアに時々刻々とアップされていく、無数の書き込みや写真、動画など、多彩で無秩序な情報ストリームを指す。

 そして現代が現代たる所以は、後者の「非構造化データ」が過去とは比較にならないペースで爆発的に増加していることにある。たとえば私たちが普段、家や職場、学校から呟くTwitterの書き込み、あるいはFacebook上で四六時中発するコメントや写真、そして「いいね」ボタンに代表される個人の嗜好情報など。これらは過去に存在しなかったものであり、今だからこそIT企業のサーバーにデータとして長期に渡って蓄積される。つまり、このような非構造化データこそが、現代を象徴する「ビッグ・データ」の肝なのである。

 この点から見て、今回のFacebook上場に伴う喧噪は、単にFacebookという一企業に寄せられた期待というより、もっと大きな「ビッグ・データ」という社会現象に対する世間の期待値を反映していると言えるだろう。そして上場後の同社株価が低迷したことは、このビッグ・データに寄せられた大きな期待が、ひょっとしたら期待外れに終わるという懸念も暗示している。つまりビッグ・データから経済的価値を引き出すのは、そう容易なことではないのだ。

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