太陽光発電は全体の3%!? 「脱原発」維持に向けて現実的な方策を模索し始めたドイツの厳しいエネルギー事情とは

太陽光も風力も、完全実用化にはほど遠いのが現状〔PHOTO〕gettyimages

 ドイツの環境大臣が交代した。ドイツは遠いなどとは言っていられない。独自のエネルギー政策を模索中の日本は、過激で遠大なエネルギー転換に向かって突き進んでいるドイツを、絶対に視野から外せない。ただ、ドイツも暗中模索、いかにスムーズに再生可能エネルギーを伸ばしていくかという方策については、実際は、傍が思っているほど一枚岩ではない。そのジレンマが、環境大臣交代の1つの要因となったことは確かだ。

 まず、順を追っていくと、5月13日、ノートライン・ヴェストファーレン州で、州議会選挙があった。ノートライン・ヴェストファーレンというのは、デュッセルドルフ、ケルンといった人口密集地帯を抱える、ドイツで一番人口の多い州である。そういう意味では、ここでの選挙結果がドイツ中央政府に与える影響は大きい。

 さて、その結果であるが、現在ドイツの与党であるCDU(キリスト教民主同盟)が大敗。来年、総選挙を控えているので、メルケル氏にしてみればこれは悪夢に近い。同州でCDUを率いていたのはノベルト・ロットゲン(Norbert Röttgen)といって、ドイツ連邦の環境大臣、いわゆる脱原発の立役者の1人。メルケル首相との二人三脚は見事だったが、そのロットゲン氏が、州史始まって以来の低得票で、CDUをボロ負けに導いたのである。

 当然のことながら、すでにその夜、野党から「ロットゲンは環境大臣を降りるべきだ」という声が上がった。それに対してメルケル氏は、「ロットゲン氏の更迭はない」とし、ロットゲン氏も続投を表明したが、15日午後、首相官邸で緊急記者会見が開かれ、メルケル氏自らが発表したのは、なんと、環境大臣の交代! 会見の内容を知らされていなかった記者団はビックリ仰天しつつも、「やはり・・・」という感じだったに違いない。

 「辞めたくない」と言っている大臣の首をむりやり切る人事は、2005年にメルケル政権始まって以来、初の出来事だ。実は、この選挙の直前、首相と大臣の間で、ちょっとしたトラブルがあったのだが、それにしても、メルケル氏が自らの権力をまざまざと見せつけた強引な人事だった。

 新しい環境大臣は、ペーター・アルトマイヤー(Peter Altmaier/54歳)で、連邦議会での連立3党のまとめ役を務めていた人。メルケル氏が絶対的な信頼を置く人物だという。これまで与党が、多くの危うい法案(ギリシャに対する巨額の援助など)をちゃんと可決に持ち込めたのは、ひとえに彼の功績なのだそうだ。ということは、メルケル氏の"伝家の宝刀"が姿を現した? 政府のエネルギー政策における焦りは募っており、ロットゲン氏には任せておけなくなったのかもしれない。

電気料金はフランスのほぼ2倍

 さてドイツは、脱原発を決めたは良いけれど、再生可能エネルギー計画は激しく滞っている。たとえば、ネックの1つは送電線設置の遅れ。風の吹く北ドイツにいくら風車を作っても、それを電力消費地区である中・南部へ運ぶ高圧送電線網がない。建設計画は山ほどあるが、そのほとんどは、まだ着手されていないどころか、建設許可さえ下りていない。したがって、今ある風車でさえ、風の強い日は容量オーバーになるので、部分的に止めている状態だ。

 また、北海のオフショア発電(洋上風力発電)も、計画自体は素晴らしいが、実現には程遠い。海で作った電気をどうやって陸に運ぶのかも、海上の、しかも強風の吹きすさぶ高所でのメインテナンスの問題も、すべて未解決のままだ。今、立っている風車が本当に転倒しないかどうかも、まだ研究中。多くの問題は、技術的には解決可能だが、コストが合わず、つまり大々的な実用化はいつになるかわからない。

 コストが掛かり過ぎるのは、太陽光発電も同様だ。ドイツは、太陽光で作られた電力の全量買取りシステムで、パネルの設置を進めてきた。たとえば、わが家の屋根にパネルを付けたとしよう。そこで発電した電力は、電力会社が20年間にわたり、すべて買い取ってくれる(作った電気は自宅で使うのではなく、違うラインで集められる)のだ。

 太陽光電気の買取り価格は、当然のことながら市場価格よりも高い。そうでないと、誰もパネルを付けようという気にならない。太陽光電力を市場価格より高く買い取ってくれるのは、国ではなく、電力会社だ(国にはそんな予算はないので、電力会社に押し付けた)。では、電力会社がどうやってその差額をひねり出すのかというと、いたって簡単、電気代に上乗せするだけ。つまり、私が電気を売って得る収入を、国民全員が負担してくれることになる。つまり、パネルがさらに増えれば、電気代はますます高くなっていく。

 ドイツの電気がどれだけ高いかというと、家庭用も大型消費用も、すでにフランスのほぼ2倍近い。家庭用電気料金で見ると、ドイツより高いのは、EUではデンマークだけだ。ただ、家庭なら節電して我慢するという方法があるが、企業のほうはそうもいかない。電気代が高騰すれば、倒産するか、国外に出るしかない。現在、日本が抱えている問題とまるで同じだ。

 そこで仕方なく、買取り値段を下げるという法案が提出され、連邦議会は通過したが、現在、各州代表の集まりである連邦参議院のほうで審議がストップしている。SPD(ドイツ社民党)や緑の党は、買取り値段の値下げはエネルギー転換からの後退である、として反対するし、太陽光パネルの製造元を多く抱えている旧東独などの州政府は、買取値段が下がればパネルが売れず、そうでなくても倒産しそうな関連企業への懸念で、やはり反対せざるを得ない。

 いや、ドイツのパネルメーカーは、すでにどんどん倒産している。中国と台湾が、低価格製品で市場を制覇してしまったからだ。

 つまり、ドイツのジレンマは、買取り価格を据え置けばパネルは増えるが、一方で電気代が高騰し、産業が疲弊 → 景気悪化。反対に、買取り価格を下げれば、パネルを付ける人が減り、パネルメーカーや関連業種はさらに弱体化 → やはり景気悪化。おまけに太陽光発電の目標も達成できないというもの。結局、わが家が屋根にパネルを付けても付けなくても、ドイツ産業の活性化にはあまりつながらない。

 そのうえ、これほど膨大な助成金を食っている太陽光発電で作られる電気は、未だに全体の3%にすぎない。太陽のあまり照らないドイツで、なぜ太陽光発電を、このような莫大な助成金を付けてまで推進したのか、今さらながら不可解だ。風力のほうが、まだ希望がある。

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