磯田道史 第3回 「自然災害は繰り返す。だから私はいままで起きた大地震の古文書を徹底的に読み込むのです」

島地 勝彦 プロフィール

シマジ でもタッチャンが帰ってから、セオはしみじみ言ってましたよ。これでどんな危ないところにでも突撃取材出来るって。なぜなら立派な遺影が出来たからだそうだ。

立木 セオ、泣かせるじゃないの。セオ、こっちを向け。一枚特別に撮ってやろう。なかなか男っぽいいい顔してきたな。資生堂メンを毎日使ってるのか?

シマジ よかった。長老がご機嫌を直してくれて。

瀬尾 そろそろネスプレッソ・ブレーク・タイムにしましょうか。

シマジ 待て待て。その前に磯田教授が古文書をどうして読めるようになったか、訊こうじゃないか。

磯田 高校生になってからもう一度家にあった古文書を取り出して読んでみたら全然読めない。父親に訊いても読めないと言う。祖父に尋ねてみても読めないと言う。さてどうしよう。どうやったら読めるのか、考えたんです。

シマジ その好奇心がすごいよな。「栴檀は双葉より芳し」だね。

磯田 図書館に行ったら古文書辞書というのがあることを知ったんです。だけど辞書は借り出せない。仕方がないから町の小さな本屋で売っていた古文書辞書を買ったんです。その辞書には古文書の崩された字が書いてあって、その横に楷書が書いてある。それで受験勉強もせずにその辞書と古文書ばかり眺めていたら、半年くらいするとだんだん判読出来るようになってきたんです。

シマジ あなたの趣味は何ですかと訊かれて、古文書を読むことですって答えられたら、格好いいよなぁ。

磯田 古文書をいくらか読めるようになると、たとえば「徒然草」のパーツを学校の授業で読まされる、あれが物足りなくなって、全文を読まないと気が済まなくなったんです。

シマジ 磯田教授はすでに高校時代から学者になるように成長していたんだね。おれも高校時代、翻訳ものの「世界文学全集」は読んだが、日本の古典までは手が届かなかった。そういえば、高校時代、八巻先生という古文の先生がいて、「源氏物語」の宇治十帖を全文読まされたことがあったが、光源氏より息子の薫源氏のほうが物悲しくて文学的だったような気がするね。

磯田 てっきりシマジさんはモテモテの光源氏のほうが好きだと思っていました。