河野 あの歌い方と声が、もう一つのジャンルになっていた感があります。
加えて彼女を特徴づけたのはドラムですね。彼女のドラミングは大したものでしたよ。ゲームで遊ぶように難なく叩いていた。
中森 確か『渡良瀬橋』では、ドラムだけじゃなく、ピアノ、リコーダーなど大半の楽器を彼女自身が演奏しているんですよね。
河野 そうそう。なんでもできちゃうんですよ。とにかく運動神経がいい。一度彼女とキャッチボールをしたことがあるんですが、彼女は「女投げ」にならないどころか、しっかり振りかぶって投げ込んできた。
中森 それはすごい。私よりキャッチボール上手いかもしれない(笑)。
それにしても、今年でデビューから26年が経ち、森高さんももう43歳ですが、変わらないですね。
河野 本当に。2年前、久しぶりに会った時も、出会った頃のまんまでしたよ。見た目も若いし、立ち居振る舞いもまったく一緒。
中森 それってものすごく稀有なことですよね。長い間アイドルを眺めていてわかったのは、芸能界って「変わるのが普通」なところだということ。有名になってまともに付き合ってくれる人がいなくなったり、地元の友達に写真を売られたり、持て余すほどの大金を手にしたり、なかなか変わらずにいられない。だから普通の人は染まってしまって、ほとんどの場合ダメになる。
河野 わかる気がします。
中森 アイドル専門の芸能プロのマネージャーにどういう子が欲しいか聞くと、「友達いない子」とか「携帯電話持ってない子」とか言うんですよ。「そういう子のほうが続く」と。やっぱ変わった人がいいらしくて。
河野 確固たる自分を持っている子、ということでしょうね。
中森 はい。で、森高さんはデビューから、人気絶頂の20代も大過なく、スキャンダルゼロで結婚して、子どもを産んだ。さらに河野さんによれば、中年にさしかかった今も、まったく変わらないという。だから、森高さんって相当〝変な〟人なんだと思います(笑)。
河野 変でも何でも彼女みたいなオバさんなら、喜び勇んでドライブに連れ出しますよね(笑)。
「週刊現代」2012年5月26日号より