2012.05.16

[プロ野球]
森繁和×二宮清純<後編>「バッターは飛ばないボールで工夫せよ!」

『参謀』『天才たちのプロ野球』出版記念スペシャル対談
スポーツコミュニケーションズ

ファンサービスに不熱心?

二宮: 私が未だに疑問に思うのは、昨年の落合さんの“解任劇”です。球団側は観客数の減少などを理由にしたそうですが、それはまずフロントの責任でしょう。現場の最大の仕事はグラウンドで結果を残すこと。一昨年、昨年とリーグを連覇した監督を辞めさせる理由はどこにもないと思うのですが……。
: それは僕も聞きたいくらいです。何を基準に考えたのか……。「ファンサービスに不熱心」という話も出ましたが、むしろ監督とは「なんで球団は何もやらないんだろう」と話していたんですよ。

二宮: では、落合さんが「ファンサービスは必要ない」と言っていたわけではないと?
: 僕が知る限りでは、そんな発言は1回も聞いたことがありません。もちろん現場は勝利が最優先ですから、いくら球団が企画したファンサービスでも、選手のコンディションを考慮して彼らを守る必要はあります。ところが、そもそも球団から、そういった提案が僕たちのところへ来たことがなかったんですから。

二宮: しかも契約を更新しないと告げられたタイミングが、東京ヤクルトとの首位攻防4連戦の直前でした。
: ここで発表か、という気持ちでしたよ。西武のコーチ時代に森監督が日本シリーズの最中に退任報道が流れたことを思い出しました。真っ先に心配したのが選手の動揺です。選手たちには「この4連戦が勝負だ」と言ってきましたから。監督はこの件については一切、選手に言わないというスタンスだったので、僕はまずコーチ陣を集めて、「ここまで来たらオレたちにも意地がある。なんとか優勝して辞めようや」と話をしました。そして、選手とのミーティングでハッキリ言いました。「監督がこういう状況になって、オレも今年で辞める」と。続けて「でも、今までの苦しいシーズン、オレたちはずっと我慢してきた。この4連戦に合わせてローテーションを組んできたんだ。今日の1試合目が大事だ。ここで勝てなかったら、まずダメだと思ってくれ」と。

二宮: とにかく選手の気持ちを切らさないようにしたかったわけですね。
: そうです。日本ハムが梨田(昌孝)監督が退任を発表して、一気に優勝争いから脱落した。これを恐れました。だから、「今日、1勝して、次の2試合目も勝ったら、まだチャンスがあると思ってくれ」と言ったんです。そして「3つ勝ったらなんとかなるぞ。最後の1試合は負けてもいい」と。すると本当に、その通り3連勝して最後の試合で負けました。

二宮: 4連戦前にヤクルトとの差は4.5ゲームありましたが、これで2.5ゲーム差。逆転優勝への望みがつながった4連戦になりました。
: 幸いだったのは、10月にもヤクルトとの4連戦がもう1度あったこと。「ここでも同じローテーションで戦って、3勝1敗で行こう。それなら0.5ゲーム差だ」と話をしていました。その後、ヤクルトにケガ人や病人が出たりして、逆に10月の4連戦は0.5ゲーム、リードして迎えることができた。選手たちが、その気になってくれたことが最後の逆転につながったと思います。

二宮: 落合さんは8年間で中日をここまでの常勝軍団にできたのは、コーチや選手の人事についても全権を委ねられていた点も大きかったのではないでしょうか。
: それは全部握っていましたね。選手の年俸についても球団の査定担当とよく話をしていました。僕もピッチャーに関しては、試合ごとに登板した選手の評価を出していましたよ。勝ちゲームだったら、今日の勝利に貢献した割合は先発が何割で、中継ぎが何割とか。それを監督がチェックして査定担当がつけたポイントと照らし合わせていました。

二宮: 監督も査定に加わっているとなると、選手も張り合いが出るでしょうね。
: 監督は選手のことをよく見ていましたからね。「コイツは、あまり出番はなかったけど、終盤で守備固めに出てくれなかったら勝てなかった。だからポイントをあげてくれ」といった話を査定の人間にしていました。

二宮: 落合さんには現役時代から“オレ流”とか“自己中心的”というイメージが強いのですが、指導者としては気配りの人だったんですね。
: そうですよ。オレ流なんて、とても思えない。8年間一緒にやってみて、周りが勝手に言っているだけだなと思いました。

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