コンテンツ・キュレーターはウェブの新しいスーパーヒーローなのか?

オンライン・ニュース・サイト「ビジネス・インサイダー(Business Insider)」トップ画面より

 「デジタル・キュレーション」というテーマで原稿を書く機会を頂いたことで、今まで以上に様々な海外のニュース記事を読み漁る生活が始まりました。日々膨大なニュース・コンテンツに触れる中で、何度となく目にするキーワードが「キュレーション」という言葉です。

 次々と発展拡大を続けるウェブの進化により情報が爆発的に増大する中で、ある一定のテーマに対し一貫性を持ち、目利き力を持った上で情報を収集し、選別し、共有することの必要性を以前にも増して強く感じるようになったからです。

 『キュレーション~収集し、選別し、編集し、共有する技術』(2011年/12月 プレジデント社)の著者であるスティーブン・ローゼンバウム氏は、ビジネス雑誌『ファストカンパニー』の最近の記事の中で、そんなウェブのコンテンツのキュレーションを行う人のことを「スーパーヒーロー」として紹介しています。

●4月16日 『Content Curators Are The New Superheros Of The Web(コンテンツ・キュレーターはウェブの新しいスーパーヒーローだ)』 ファストカンパニー

 記事によると、最近ではたった一日で2億5千万もの写真がフェイスブックで共有され、86万4千時間分もの動画がYouTubeにアップされ、2,940億通もの電子メールが配信されるような世界に私たちは現在生きているとのことです。

 スーパーヒーローたるコンテンツ・キュレーターは良質な情報を見つけ出し、それを整理して意味付けをし、そして共有することで人々から信頼を得たり、専門家としての評価を得たりする可能性が生まれつつあると指摘しています。一方でキュレーターはなりたいと思ってすぐになれるものではなく、日々の地道な活動の積み重ねからしか生まれず、スーパーヒーローでいるということは時にして感謝される仕事でもない、とも言っています。

ニュースは眠らない~急成長中の米ニューメディアを支える編集者

 ニューヨーク・タイムズで先日取り上げられたオンライン・ビジネスニュース・サイト「ビジネス・インサイダー(Business Insider)」の編集者の話は「コンテンツ・キュレーター=スーパーヒーロー説」を考える上で非常に興味深い記事でしたのでご紹介したいと思います。

●5月12日 『Joe Weisenthal vs. the 24-Hour News Cycle(ジョー・ワイゼンソール(ニュースサイト「ビジネス・インサイダー」編集者)対「24時間のニュース・サイクル」)』 ニューヨーク・タイムズ

 現在31歳の編集者であるワイゼンソール氏は毎朝4時にニューヨークの自宅で目を覚まし、まず「What'd I miss? (自分が寝ていた5~6時間の間に)何を見逃したかな?」と2万人を超えるツイッターのフォロワーに呟くことから一日の仕事が始まります。

 その後2時間程はリビングルームで様々なニュース、ブログ記事、ツイッター、メール等を読み込み、「ビジネス・インサイダー」のニュースのネタになるような情報を集めてから出社するのが彼の日課です。

 彼の平均的な一日というのは、勤務時間が約16時間、平均ツイート数は150、執筆する記事の数が15を超えるという、想像を絶するハードワーカーぶりで、ニューヨーク・タイムズの記事は、18枚ものスライド写真付きでワイゼンソール氏の一日を詳細に描いています。

 ワイゼンソール氏が働いている「ビジネス・インサイダー」は2007年に元ウォールストリートの著名アナリストだったヘンリー・ブロジェット氏らによって設立された金融やテック系に強いオンラインニュースサイトです。

 現在月間サイト訪問者数1,500万を超える同サイトの特徴は、リアルタイムのニュースを即座にウェブにアップし、注目を集めやすい見出しと、画像やグラフを数多くのスライドで分かりやすく示すことで知られ、急成長を遂げています。

 ただそのニュースの出所に関しては、公的に発表されたデータや独自取材による記事もあるものの、他のメディアによる取材記事内容に見やすいレイアウトとセンセーショナルな見出しを付けて掲載しただけのものも多く、時に批判にさらされることもあります。

 ワイゼンソール氏のオフィスにはスクリーンが4つあり、金融関係の情報を得るためのブルームバーグ端末、ツイッターの情報収集専用のもの、その他はサイト閲覧用とブログニュース記事を書くためのものとして使い分けをしているようです。

 テキサス大学在学中は演劇に没頭、その後投資銀行でアナリストとして勤務していた際に物足りなさから始めた金融系ブログが人気を博し、現在では編集者兼ブロガーとして12人の部下を管理するまでに抜擢されました。彼の記事はニューヨーク・タイムズの著名コラムニスト、ポール・クルーグマンや著名ヘッジファンドのマネージャーからも注目される程、業界でも尊敬を集めていると言われています。

 誰よりも早く目を覚まし、一日中常にニュースを追いかけ、これだ、と思える情報をタイムリーに記事として発信するという、キュレーターとしての仕事ぶりを描いた今回の記事は1,000回以上ツイッターで共有されています。常軌を逸した働き方に疑問も呈されていましたが、ニュースメディアのビジネスの将来を考える上で重要な記事であるという専門家の声とともに、数多くの人の注目を集めたことは間違いありません。

 果たしてワイゼンソール氏はスーパーヒーローなのでしょうか? みなさんはキュレーターという行為、或は専門職としてのこの職業の未来をどのように考えますか?

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