[サッカー]
田崎健太「広山が望むもの<vol.5>」

スポーツコミュニケーションズ

 様々な文化背景から受ける刺激

 ウエイトレスが山盛りのポテトフライとステーキの載った皿を運んでいるのを見て、「あれでスモールですから。質より量なんでしょうね」と、広山は微笑んだ。

「コーラの量とかもアメリカは半端じゃないよね。選手たちも食事に行くと大量のコーラとか飲むの?」

 彼は首を振った。
「みんなヘルシーですね。普段はゲータレードとか飲んでいて、レストランに行くと水です。給料が高くないというのもあるんでしょうけど、賢く節約しているという感じがしますね」

 前日の試合内容について聞くことにした。
「試合を見ていると、7番の選手をワントップにして、その後ろに3枚、中盤の選手を置いていた。あれがキッカーズの戦術なのかな?」
「今はそうですね。左右にウィングの選手を置くのが好きみたいです。他のチームはオーソドックスな4-4-2を採用しているんですが、うちは、4-2-3-1や4-3-3。ヨーロッパでやっている4-2-3-1とは違って、クラシカルなワントップを置いて、クロスから点を獲るみたいな。昨日はボールをきちんと繋いでいましたが、悪い時はすぐにロングボールを前に入れることも多い」

「ただ、ゴールに近づいた時のフィニッシュが雑というか、工夫がないというか……」
「昨日は相手がボールを持たせてくれたので、余裕があり過ぎたのかな。ただ、ペナ(ルティ・エリア)の中で鋭く仕留められるようなレベルの選手はいないです」

「引きつけて、ためを作ってからスルーパスを狙ったりする選手もいなかった」
「途中から入ったブラジル人の選手はそういうプレーが出来るんですけど」

リッチモンド・キッカーズのロッカールーム。ユニフォームが背番号順に並んでいる

 8番をつけた、ジェルソン・ドス・サントスという選手だった。

「彼は面白いんですよ。サンパウロからリッチモンドの大学に入るためにアメリカに来たんです。卒業してこのチームに入ってやるようになって、サッカー選手としてもう少し上を目指してもいいかなと思うようになった。今は、ブラジルのクラブでやることも考えているみたいです」

 様々な文化背景を持つ選手の中で、広山はいい刺激を受けているようだった。

(つづく)

田崎健太(たざき けんた)プロフィール>
ノンフィクション作家。1968年3月13日京都市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、小学館に勤務。2000年より退社して、文筆業に入る。『此処ではな い何処かへ 広山望の挑戦』 (幻冬舎)、『W杯に群がる男達-巨大サッカービジネスの闇―』(新潮文庫)など著書多数。最新刊は、『偶然完全 勝新太郎伝』(講談社 2011年12 月2日発売)。早稲田大学講師として『スポーツジャーナリズム論』を担当。早稲田大学スポーツ産業研究所 招聘研究員。携帯サイト『二宮清純.com』にて「65億人のフットボール」を好評連載中(毎月5日更新)。
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