[サッカー]
田崎健太「広山が望むもの<vol.5>」

スポーツコミュニケーションズ

リッチモンドの選手は“普通の青年”

「選手のプロフィールを見たら、どれも経歴に大学名が書かれていた。これまでのチームとは様子が違うね」
「基本的にアメリカの大学でプレーしてからプロになっている選手ばかりですね。MLS(メジャーリーグサッカー)もアメリカの大学を経て、ドラフトにかかるというのが一般的みたいだから。ここ(ユナイテッド・サッカーリーグ)もそうですね」

「外国人選手もそうなの?」
「ええ。イギリス人のキーパーとぼく以外はそうですね。だから母国語でなくても、みんな英語を流暢に話します。ぼく以外は」

 広山の話を聞きながら、僕は前日にロッカールームで顔を合わせた選手たちを思い出した。

 欧州のトップリーグのサッカー選手と接してみると、空虚な印象を受けることが少なくない。高級品のジーンズに真新しい革靴、派手なシャツ、そしてスポーツカー……彼らの多くは驚くほどよく似ている。サッカー選手という職業がなければ、彼らの身につけている高級品は煙のように消えてしまう。人は何かを得れば、必ず何かを失うものだ。彼らが憧れるサッカー選手という職業に就くために捨てなければならないことは多かっただろう。知性の香りがないことも含めて。

一方、前日会ったリッチモンドの選手たちは皆、にこやかで親しみやすい印象があった。いい意味で普通の青年だった。

「みんなしっかりした大人だなということを一番に感じますね。サッカーだけしていればいいという立場じゃないからでしょうね。コーチとして子どもを教えたり、メインはサッカーであっても、ホテルで働いている選手もいます。色んなところと繋がりのある人が多い。」

 広山はぼくが広げた選手リストを指しながら、「16番の選手いるでしょ?」と言った。スコットランドのペイズリー出身のロス・マッケンジーという中盤の選手で、バージニア州のオールド・ドミニオン大学からキッカーズに入っていた。

「彼は若いんですけれど、週一回、チームが子ども向けに行っているサッカースクールのディレクターをやっているんです」

 前回にも書いたが、キッカーズではサッカースクールの経営が大きな収入源となっている。

「世界中のほとんどのプロクラブは、有料観客、スポンサーを集めて経営を成り立たせている。でも、このチームの場合は、子どものサッカースクールからの収入があって、スポンサーにはそれほど頼っていない。キッカーズのようなクラブが日本にあってもいいと思うんです」

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