撮影:立木義浩
第1回はこちらをご覧ください。
シマジ 『武士の家計簿』を読むと、お侍さんはみんな貧乏だったことがわかりますね。本当だったんですか。
磯田 そうなんです。いま官僚は7.8%給料が削減されると騒いでいますが、江戸時代はもっと悲惨でした。半地下利上げという制度では50%俸禄がカットされたんです。それが日常化していて元には戻らなかった。
武士は草履取りを必ず雇わなければならない。その人件費は高くなる。しかも親戚付き合いで年に200回くらい宴を持たなければならない。そのとき下々の者にもご祝儀を包まなければならない。身分が上の武士はそれなりに実入りはあるが出るほうも大きい。シマジさんも社長をやったとき、冠婚葬祭でお金がたくさん出て行ったでしょう。
立木 シマジはそんなに使っていません。全部自分のためだけに浪費してきました。シングルモルト、葉巻、お洒落な衣服、それに女です。
シマジ でも、いまおれが出版界で重宝がられるのは、酒、シガー、お洒落ですね。政治とか経済問題で原稿を書いてくれという注文は皆無です。
立木 当たり前だよ。シマジに政治のことを訊くマスコミはいないよ。
磯田 でも、シマジさんはしっかりした歴史観を持っていますよ。
シマジ タッチャン、聞いた。磯田教授はおれをわかってくれている。
立木 磯田教授、どうせシマジは、そのうちメッキが剥げるから、あまり深く追求しないでくださいね。