米ツアーのウエルス・ファーゴ選手権でリッキー・ファウラーが待望の初優勝を遂げた。
最終日は大混戦となり、ファウラー、ローリー・マキロイ、DAポインツによる3人のプレーオフへ突入。1ホール目の18番(パー4)で第2打をピン左1.2メートルに付けたファウラーが、バーディーパットを沈め、09年のプロデビュー戦以来、67試合目で米ツアー・チャンピオンに輝いた。
友人どうし、仲間どうしの連鎖反応というものは、本当に起こるものなのだと、つくづく感じさせられる勝利だった。
と言うのも、ファウラーは首位に1打差の4位で好発進した初日から、マスターズで見たババ・ワトソンの勝利に強い刺激を受け、「勝利への渇望が強まった」と語っていたからだ。
マスターズのプレーオフ2ホール目でワトソンがあの奇跡の40ヤード・フックを打ったとき。ウイニングパットを沈め、母親と抱き合って号泣したとき。ワトソンを眺めながら、ファウラーはこう思ったのだそうだ。
「僕もあのポジションに立ちたい。勝ちたい」
ミラクルショットを見せ、グリーンジャケットを羽織する姿を見せてくれたワトソンが「今度は僕を近いうちに勝たせてくれる」。ファウラーは、そう信じていた。
友達から友達へ、勝利の連鎖。とはいえ、その連鎖は、友達であれば誰でも勝たせてくれるような魔法ではない。連鎖反応が起こるためには、言うまでもなく、その大前提となる条件がある。
1つは、技術面の裏付けだ。ファウラーはマスターズ後、すぐ翌週こそ予選落ちしたものの、2週間後からは調子がぐんぐん上がり、先週のチューリッヒ・クラシックでは10位。「スイングもショットも、すごくいいと感じていた。十分に優勝できるだけの技術を持っていると僕は思っている」。そう言い続けていた。
「自分は米ツアーで優勝できる」とファウラーが感じたのは09年のデビュー時だった。プロ転向直後にフォールシリーズに推薦出場したファウラーは、第1戦でいきなり7位、第2戦でプレーオフに絡み、惜敗して2位。その時点から「少なくとも優勝争いができるだけの力が自分には備わっている」と彼は手ごたえを感じていた。
無論、その後も技術を磨き続け、ショートゲームの向上、とりわけバンカーショットの練習に注力してきた。これまで米ツアーで4度も2位になり、昨年末は韓国オープンでプロ初勝利も挙げることができた。チャンピオンになるために求められる技術は、とうに身に付けていたのだが、どうしても米ツアーの優勝には、ぎりぎりで手が届かなかった。
ついに、未勝利状態から抜け出し、チャンピオンの仲間入りをするための最後の一線を越えることができたのは「コースマネジメントと忍耐と集中力の維持のおかげ」。待望の勝利につながった直接的な要因は、技術面より、自信や忍耐、集中力といった精神面、そしてマネジメントという思考面だったとファウラーは振り返った。
幼いころから、オーガスタの72ホール目でウイニングウォークする自分の姿を夢見ながらクラブを振ってきた。それゆえ、これまでの優勝争いでは、しばしば、ウイニングウォークしている自分をラウンド中に想像し、崩れてしまった。そんな失敗をどれほど繰り返し、悔し涙をどれほど流してきたことか。
「今日は、そんなふうに先走る自分の思考を、プレー中、幾度も引き戻した」
優勝を目前にしながらグリーンに向かうときも、「真剣さを失っちゃいけない、まだやるべきことが残っているんだと必死に自分に言い聞かせた。(1.2メートルのパットは)実際より長く見え、いわゆるOKパットの距離ではない、油断はできないぞと思って集中を取り戻した」